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#スイーツ男子の欲望はラスクの硬さと砕け散る弱さに似て⑤

 「それでは乾さん、森島さん、滝川さんの三人は夏期講習の受付終了です。お疲れ様でした」  予備校の受付事務のお姉さんはさらりと言った。18万円の領収書をじっと見つめてこんな大金を自ら支払った記念に何か甘い物を補給したいよく分からない何とも言えない気分になっていた。  「行くで暖!何やじっと見て。もうお金が惜しくなったとんか?」  『違う、そんなんじゃないよ』  「けどよかったやん。親に言いにくいって言ととったけどお金出してもらえて」  『あっ、と、とりあえず言ったら大丈夫だった』  もちろんそれは嘘。二回目の撮影から3週間が経ち、それからも撮影の帰りに毎度手渡される三万円はこの瞬間に全て無くなってしまった。  あのルームツアーの動画は意外にも好評だった。もちろんまだまだ批判の多いけれど、カップルとして認め楽しんでいるコメントも見られるようになり、既に二人のファンだと言う人達もいる。  大我は演技も編集もとても上手くてあの動画では偽カップルとは疑う余地もない。うまく騙せているのはいいことだけれど"ファン"と言ってくれる人たちには、裏切り行為のようで申し訳ない感情も心の奥の方で多少なりとも湧き上がる。  『僕このままバスで病院行くからここで』  「病院?どこか悪いんか?」  『あー…今ね陽が骨折で入院してて、お母さんに頼まれて着替えとか色々持って行かなくちゃいけない』  大きなトートバックを上げて明希といつみに見せると驚きと心配の顔を同時にする。  「えー!そうなの?弟の陽くん?骨折ってどうしちゃったの〜!?それでしばらく入院?」  『サッカーの練習中にだって、、』  「ほんなら大好きなサッカーしばらくできへんやんか、ショックやろな。お見舞い俺も行きたいけどこれからバイトやねん。今度行く時付き合うてもええか?」  『むしろ僕が行くより明希の方が喜ぶと思うけどね、、それじゃまた明日』  二人と別れ暖は一人バス停で時刻を確認して列に並ぶ。目の前の若い二人組の女性の後ろに立って10分後のバスを待った。  7月に入って急に夏めいた空を見上げて自分の環境とともに季節も変わっていた事に気づく。屋根のないバス停で日差しをギンギンに浴びながら重いバッグをボスっと下に置いて一息ついた。  「でも私さマコトよりNATSUの方が好きかもー」  「わかる!私もそう!なんか動きとか可愛いし大我が大事にしてるのが伝わる♡」  予想もしない会話が飛び込んできた。それは前の二人組の女子からで聞き間違いする距離ではない。行き交う車の騒音から何とか会話を拾って聞き耳を立てる。

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