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#スイーツ男子の欲望はラスクの硬さと砕け散る弱さに似て⑫
「OKっ!じゃあすぐここ片付けるから、そしたら隣の部屋行こう」
『うん、、ちょっと親に連絡しておく。配信中にいっぱい電話きてたから』
「あぁそうだね。心配してるだろうし!」
スマホを手に取り隣の部屋に移動して母親に電話をかける。
『もしもしお母さん?ちょっと色々と立て込んでて連絡遅れてごめん』
「暖!どこで何してるの?早く帰ってきなさい」
『あー…っと、それが今日友達の家に泊まるから。課題一緒にしてたらこんな時間になってて』
「あら?珍しいわね。友達って誰!?もしかしてこの前、家に来た子?それとも女の子かしら!?」
普段、外泊なんて絶対にしない暖からのお泊まり連絡に少し驚きの声。そして相手が気になったのか想像力豊かな質問を投げかける。
『違うよ、、あ、明希だよ!明希!』
「あ〜明希くんね。じゃそう言えばいいじゃない。明日の学校大丈夫なの?」
『学校もそのまま行くから。あー、、うん、、それじゃ、、おやすみ』
突然のことに明希の名前を出してしまったが説明の手間も省けるし母親も知ってる子の方が安心すると思っての事。
大体もう二十歳になろうとする男子のたった1日の外泊がこんな一大イベントのように騒ぐのもおかしな話。
「どうだった?」
『あっうん。とりあえず大丈夫。学校の子と課題してそのまま泊まるって言っておいた』
「そっか。お母さん相当心配性なんだね。だって今どき19歳の男子がちょっと帰りが遅い位で連絡してこないでしょ」
『それはー…そもそも友達いないし、、だから家に誘われる事もないから』
「それじゃあ、動画配信やってるなんて死んでも言えないね。バレないようにしないとっ。そうだ、ベッド一つしか無いけど一緒でいい?大きなサイズだから狭くはないと思うけど」
『えっ?い、一緒に!!?』
サイズの問題ではなく普通こういう時に初めに一緒に寝るのが前提の提案しないと思ってたけど、、軽く言った大我に男性同士が一緒に寝ることに慣れが伺える。
「あっそっか。俺たちはそういうんじゃないもんね!ごめん、俺は撮影用の方で寝るからベッド使って」
「……べ、別に問題ないよ。ただ寝るだけでしょ?うん、そう!ただ寝るだけ!!寝るだけ!」
自分に言い聞かせるように声を裏返しながら連呼する暖が可愛く見えてふっと笑って近づいた大我。
「片付け終わったからあっちの部屋行こう」
『う、うん』
ふと中学時代の林間学校を思い出した。それくらい誰かの家に呼ばれて夜を明かす事は暖には皆無で珍しい事。
だけどそれも酷い思い出で、学校行事の写真にはいつも端っこに一人で写っていて空気のように誰にも気をとめられず笑顔の写真を1枚もない。
でも今はどうだろう、状況が全く変わっている。あの時の自分には想像できない程、たくさんの人に注目されている。ネットの世界とは人の人生をも変えてしまう。それに何となく優越感を感じて顔が自然とニヤけてしまう。
そして隣の部屋移動しパチっと電気を付けると服など日用品が乱雑に置かれていた。
「最近バタバタしててちょっと散らかってるけど。ん〜そうだな、とりあえずシャワー行く?」
『えっ!シャワー!?一緒に!?』
「いや、、一緒にとは言ってないけど」
『だ、だよね!僕は後で大丈夫、大我が先に』
「そう?じゃぁお先に。自由にくつろいでて」
そう言ってバスルームの方へ行った大我。
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