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#スイーツ男子の葛藤はミルフィーユの重なる想いに挟まれて

  予備校に通う人種はわかりやすい。大きなカバンやリュックを背負っていつも時間を気にしている。スムーズに大学に受かっていれば、今頃新しい友達や出会いに浮かれて、何となく興味のあるサークルに入って恋愛して、卒業できる程度に勉強してそこそこのタイミングで就活したりする。 これが10代後半から20代前半のよくある人生。  そんなよくある人生をただ歩むために何キロにもなる教科書の束をカバンに詰め毎朝電車に乗って夜まで教室で過ごす。  それでいい、普通の人間は普通の人生で。  『あっ!降りるからあの辺で止めて』  「どうして?学校もう少し先じゃない?」  『そうだけどー…ここで大丈夫だからっ!』  「このまま学校の前まで行くと何か問題でもある?大体あと8分で以内に教室入らなきゃダメなのに、そんなこと言っていいのは陸上選手位だよ!ははっ」  上機嫌に笑う大我の腰に腕を回しヘルメットの中の顔を歪ませて落ちないようにしがみついている暖。  昨夜あのまま寝落ち同然に深い眠りに入ったら最後、もちろんスマホのアラームなど鳴るはずもなく見事大幅な寝坊。このままだと遅刻確定だったはずが、大我のバイク運転テクと近道データのおかげでギリギリ間に合うか瀬戸際と戦っている。 まさに今そんな状況の真っ只中だ。    「よしっ着いた。4分前!ほら暖、言った通り間に合ったじゃん」  『うん、送ってくれてありがと!それじゃ』  「ちょっと暖!待って、ヘルメット!」  『あーそうだった!、、あれ!?外れないッ』      焦りから上手くヘルメットの顎のバックルが外れずジタバタしていると、スッと手を差し伸べ慣れた手つきで難なく外した大我はヘルメット脱いだ暖の顔を見つめた。  『……何?じっと見て、、もしかして何か顔についてる!?顔ちゃんと洗ったはずなんだけど!!』  「違うよ。いやさ、ほんとに受験生なんだなーって。意外と普段の暖を知らないから新鮮な感じ。こういうところ初めて来たし。ちょっと中に入ってみようかなー」  『はっ!?何言ってんの!ダメだよっ』  「どうして?普段、暖がどんな場所でどんなふうに授業受けているのか見たいだけ」    キラキラと懇願する目に負けそうになるけど心を鬼にして断固拒否。それには色んな理由があるけれど、一番見られたくない明希やいつみがいる教室になんて呼べるわけない。    そうじゃなくてもすでに目立っている。この会話をしている間も、予備校に入っていく生徒たちの目は大我に向けられて暖も気が気ではなかった。    『本当に無理だから!生徒以外は入れないの!あ〜もう時間っ。授業始まるから行くね』  「わかったよ、頑張って!」  走って教室へ入っていく暖の後ろ姿を手を振って見送ると、バイクは再びエンジンをかけ来た道を戻って行った。    そんな一部始終にガラス越しから視線を向ける者。  『いつみ、おはよう!』  「遅っ。今日休みかと思ったじゃん」  『ちょっと寝坊してさ、、あれ?明希は?』  「さっきトイレ行ったけどもう戻るんじゃない?」  いつもの明希のカバンが机にあるけど姿が見えなくて隣に座るいつみにさり気なく問いかけた。昨日の夜電話で言っていた、明希の数学のと1限目の教科書を探して準備を始める。  チャイムが鳴ると同時に戻ってきた明希はいつも明るく"おはよう"と声をかけるのになぜか黙って暖の前に座った。  『明希おはよう。はいこれ数学!持って帰ってごめんね』  「ん。ありがとう、、そんで?」  『ん?、、そんでって何……?』  「さっきバイクで豪快に登場してたやろ。一緒におったん誰やろうと思って?」  まさか見られてたとは思わずに暖の目は泳いで分かりやすく動揺してしまう。明希は一切笑ってなく少し不機嫌の様にも見える。その言葉に早速興味津々のいつみは暖に詰め寄った。  「えっ!何、何!?暖がバイクで登校?」  『さっきトイレから戻る時に入り口前で見えたんや、二人乗りして来たやろ?』  「そうなの?誰よ!?教えてよー」  『あー…っと、、そのー……』
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