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#スイーツ男子の葛藤はミルフィーユの重なる想いに挟まれて③

 「ふーん。名前はね、大我って言うの。配信はタイガーチャンネルって言うんだけど、最近違う恋人に変わって配信してんの。何が前の彼氏が女とイチャイチャしてんの撮られてんの〜ばっかみたい!」  嫌な予感は的中した。願いだから違うチャンネルの名前が出てこいと願ったけれど案の定、お馴染みのチャンネル名は出るしスキャンダルの事までしっかりご存知だ。 これはマズイかもしれない、、急に手に汗がじんわりと滲んで自然に視線を外して遠くを見る。  『……そ、そ、そうなんだ。ちょっと知らないなぁ。で、そのチャンネルをいつみは毎回見てる、、の?』  「大我のファンだから♡相手が変わっても配信続ける限り観るし応援する」  『応援!?……それってどういう意味?』  「えっ?だって愛し合って付き合ってるんだったらその先を考えてんじゃない?結婚とか!そこは普通の男女と一緒だと思うけど」  『、、、結婚!そっ、それはどうだろう!?』  「ない話じゃないよ。そりゃ日本じゃ同性同士の結婚は認められてないけどさ」  ただかっこいい男達を見たいとかだけじゃなく、そんな風に本人達の幸せを願って見てる人もいるんだなぁと思うとますます胸が痛む。    「あぁ〜これぞ純愛じゃない!?素敵〜困難な恋ほど燃えるって言うし〜♡」  『純愛……なのか、、な』  「まっ、暖にはわからないかっ!」  ドアが開いて"お待たせしました"とトレイに大きなストロベリーパフェを乗せて入ってきた店員に"ありがとうございまーす"と答えてご満悦のいつみ。甘いものに目がない暖は餌を待つ犬のようにパフェを見つめる。  『そんなのいつの間に注文してたの!?』  「へへ〜ん、いいでしょ!けど暖にはあげないよー」  イチゴ、生クリーム、アイスが器から溢れんばかりに乗っかって左右に1本ずつ刺さっているのはポッキーだ。この話の流れでまさかの図ったように出現したポッキーは暖から見れば一番警戒したい物。    「いただきま〜す!あっ、そうそう昨日の配信でポッキーゲームしてたの!キス初公開したの!!やばかった〜」  『あー…それはよかった、、ね』  昨夜、配信で顔を晒した直後と言うのもありたいぶ警戒心もあったものの、いつみは暖が当本人だとは全く気づく様子はなくおいしそうに食べ進める。  「けど大我がお菓子食べてんの珍しかった!結構前から配信観てるてるけど〜甘い物苦手って言ってたし、いや違う。食べれない体質って言ってたんだっけなー?うろ覚えだけど」  『そうなの!?大我がっ!?ホントに!?そう言ってたの!?』  「わっ!ちょっと何!!?」  暖の突然の声に驚いた拍子にスプーンに乗っかったクリームごと膝に落として白いロングスカートにピンクに染まる。  「あ〜!!やっちゃった〜最悪っ!」  『ごめんっ、、大丈夫!?こ、これで拭いて』  「ねぇ。よーくみるとさ、暖の目ー…もしかしてさぁ。そうなの、、?そんな訳ないよね?」  暖が机の上の布巾(ふきん)を差し出すが、無視して意味ありげな口調でゆっくり暖に顔を近づけ目をじーっと見つめる。  『なっ、な、何!?』  「隠せると思った?言い逃れできないよ。白状してっ!」  これはもう完全に気づかれてしまったかもしれない。いくら帽子被ってマスク付けて、普段着ない派手な服装したって毎日のように一緒にいる友人なら分かってしまうだろう。 顔で分からなくても声や癖や仕草まではごまかせない。  あっけなく終了の鐘が身体中に響き渡る。 まさかこんなタイミングでこんな風に終わってしまうのか。そうかこれは230万人や大切な友人を騙していた罰なんだ…  大我ー…短い夢でも見せてくれてありがとう。  暖の脳内はぐるぐるとパンク寸前。 とりあえず、いつみには偽りなく全て話してきちんと謝らないと!と立ち上がった。  『いやー…そのっ、違うんだよ!ちゃんと説明するー…』

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