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#スイーツ男子の葛藤はミルフィーユの重なる想いに挟まれて⑧
スタートの合図とともに一斉に飛び出したバイクはマフラーの音を響かせて、誰が先頭かなんてわからないほど車体同士は密接して走っていく。
「スタートしたな」
『あのー…これってどれぐらい走るんですか?』
「10周だよ!それで一番最初に戻ってきた者の勝ち!至ってシンプルだろ!?」
『10周!?目が回っちゃいそう……』
暖にとって場違いなサーキットの環境だとしても大我の知らない一面が垣間見れるチャンスに心は揺れる。修一にとってもサーキットでの大我の本気の走りを見ることに内心ワクワクしていた。
「それで?大我とは上手くやれてんの?」
『えっ配信ですか?まぁ何とかやれてると思います』
「イメージで言って悪いけど、暖くんはあまり人前に出るのが得意ではなさそうに見えるんだけど何でやろうと?」
『えっ?それはー…』
室内のモニターに目を向けながら軽く言葉だけ暖に投げかけた修一。答えに詰まる暖はバイクで猛スピードで駆けていく集団から大我を必死で目で追いながら口を開いた。
『、、やっぱり自分のせいで配信が止まってしまったので償いというか……』
「はいはい、それは建前の理由ね!じゃなくて本音を聞きたいんだよ」
『ほ、本音ですっ!嘘じゃないです』
「ま〜それもほんとだとして他にもあるんじゃないか?」
完全に見透かされて嘘がつけない相手だとわかって一呼吸おいて口を開いた。
『僕は今まで誰かに必要とされた事が無くて学校でも空気のように居ても居ないような存在でした。華やかな世界には無縁だし、そんな場所に自分がいる想像すらできなかった、、』
「ところがある日突然世界が変わった。あの投稿を境に!って事かな?」
『あの、変な話ですけどー…あの投稿が炎上して多くの人に見られてリアクションがあった時、ちょっと気持ちいい感情が湧いたんですよね、、あっ!これ大我には絶対言わないでくださいよっ』
「わかった、言わないよ。なるほどね〜」
暖はサーキットに背を向けた。大我にこんな事口が裂けても言えない思いと自分なんかが持っていてはいけない承認欲求が恥ずかしかった。
「なぁ暖くんから大我はどう見えてる?」
『えっ?えっと…カリスマ性があって、、』
「大我はあぁ見えて繊細なんだ。見た目も行動もお調子者で悩みなんてなく見えるだろ?」
『まぁ、、』
「だけど時々、痛々しいほど自身を偽って生きようとしてる」
『どういうことですか?僕にはそうな風には見えないんですが、、わかりやすく言えば勝ち組の人生を歩んでるように見えて』
モニターに映るラップタイムはなかなかの記録を出していて徐々にバイクの間隔が空き、二人が話しこんでいる間に半分の5周を走っていた。
「その様子だとあの話を聞いてないのかな?」
『あの話……何ですか?』
腕組みをして突然考える顔と仕草をする修一はきっと大事な何かを伝えようとしている様子に暖も気になって仕方がない。
「うーん勝手に言っちゃマズいかもだけど、大我の側にいる事の多い暖くんは知っていた方がいいのかもな、、」
『教えて下さい。気になります!』
「暖くんだから言うけど。あのね、大我は持病を持ってんだよ。先天性で完治は難しい」
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