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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される③

 その文字を見てすぐに胸のざわつきを覚えたのは多々思い当たる節があるから。鳴り続ける着信音を1秒でも早く止めるべき状況だがスマホを握ったまま、画面を見つめるだけの明希。  音を止めるには"応答""拒否"のどちらかを選択する必要がある。他人のスマホなら迷わず"拒否"を選ぶのが必然だろう、だけど明希の指は溜めらないながらも"応答"に向いた。  触れた画面が変わって音は止み、通話時間のカウントが始まる。明希はそっと耳にスマホを当てて声を発せずただ静かに相手の声を聞く。  「あっ暖ごめん!メッセージ見た?あのさ明日の配信の撮影だけど夜に予定入っちゃって時間早めたいんだけ大丈夫かな?」  そうスマホ越しから聞こえた声は耳の奥を通過して脳内まで強く殴られたような衝撃が襲った。息を殺してただ聞いているだけの数秒間のカウントは続いていく。  「ん?暖?聞いてる?もしもしー」  もちろん返答のない事で大我も変に思って問いかける。明希はそのまま大我の声を記憶するかようにひたすら黙ってスマホを耳に当てている。  「あれ?おかしいなー…もしもし暖聞こえない?何か言って」  もちろん電話の先にいるのが明希だとは到底思うはずもない大我はちょっとした機械の不具合なのかと繰り返し投げかける。すると明希は耳からスマホを離すとそのまま赤い終了マークを押した。ここしばらく何者か分からない見え隠れしていた、暖の周りに存在していた人物にたどり着いた瞬間。  "配信""撮影"の言葉なんて暖に似つかわしくない内容。以前見たバイク二人乗りでの登校や嘘をついての宿泊への違和感。そして思い返せば暖の部屋にあった紙袋の中の手紙の主はまさに"大我"だった。  バラバラだったパズルは組み合わさって一つの結論に辿り着く。スマホをカバンの入っていた位置に戻して、何もなかったように元の椅子に座っていた。後ろを振り返ってまだ暖が戻らないことを確認するとポケットからスマホを取り出し、何やら検索を始めた。  「、、嘘やろ……これってアイツの、、」  明希の手元のスマホから流れる動画は2人の配信チャンネル。一度あの騒動の時に見た動画をしっかり覚えていた。組み合わさったパズルから行き着いた、明希にとって到底信じがたい現実が目の前にある。  マスクをして服を着飾っても体型や仕草そして声は誤魔化せない。そして何より決定的になった最新投稿に写るバイク。忘れもしないあの時予備校で見た二人乗りと全く同じバイクだったから。  衝撃も大きいがそれよりもどうして?と言う思いが頭に浮かんで何も言葉が出ない。これを隠すために多くの嘘をついた事や人前で目立つの事を毛嫌いしていた暖がまさかこんな事していた驚きとショック。  スクロールすると次々出てくる投稿は数こそ多くはないが明希の精神的ダメージを与えるには充分な内容。  自分の知らない暖が画面の中にいる。照れたり喜んだり困惑したり興奮したり笑ったり、様々な顔を見せていて隣にいる大我とはどう見ても親密な関係だと誰もが思うだろう。  『あ〜もう売り切ればっかで仕方なくただの水にしちゃった。甘いジュースが良かったなー糖分が必要なのに』  そんな状況を知るよしもない暖が水のペットボトルを手にして戻ってきた。背後から聞こえた声に瞬時にスマホの画面を切ってポケットに入れた明希。 暖が椅子に座ろうとするのとは逆にスッと立った明希はリュックを机の上に置き、教科書を中に入れしまい始めた。  『どうしたの!?』  「暖、悪い。俺先帰るわ、用事を思い出してん」  『えっ待ってよ、一人じゃ無理だよ』  「そんな事ないやろ」  『一人じゃやる気出ないし分かんないとこー…』  「ほんならアイツに来てもらえば、、っ!」

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