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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される④

 声を荒らげた明希に驚いたが、それ以上に言った言葉に理解しようと頭を回転させて黙り込む暖。周りの静かに本を読んでいる利用客も"またかよ"とスマホ音に続いて騒がしい二人の方を見ている。  『えっ、、誰?アイツって』  「いや、ちゃう……言うてへんそんなん」  『聞き間違い、、かな?ねぇ明希どうしたの?僕なんか怒らすようなことしたのかな?ゴメンー…それだったら謝るよ』    明希はリュックに教科書やノートを全て入れ終わるとファスナーも空けたまま急ぐように肩にかけた。喧嘩か?と周り目も冷たい目線は好奇心や心配に変わる。そして明希は遠くを見て、フゥと一呼吸置いてから暖の顔をしっかりと見た。    「別に暖は謝るような事してへん。それとも思い当たる事あるんか?」  『ないから教えて欲しいんだよっ、言ってよ』  「わからんでも謝るんやな。そうやって誰にでもすぐにゴメンゴメンって言うてると、その隙を突いてくる奴おるから気をつけた方がええで」  それは遠回しに大我の事を言っていた。きっと大我にも上手く言いくるめられて仕方なく流されてやってる事だろう。でないと暖が自ら志願してあんな事しないはず、、むしろそうであって欲しい。 だけど突然のことで気が動転もして優しい気持ちで居られない明希は意地悪い言葉しか出ない。  ここで直接本人に落ち着いて聞けほど大人でもないし、もし自分にとって最悪な答えが来ても平常心でいられる自信も無かったからだ。  「ほな急ぐわ」    "見せもんちゃうで"と睨むような目つきで周りに吐き捨てながら図書館を出て行った明希。場は静まり返って暖は"すいません"と小さく口を動かし、周りのに気を使う仕草を見せる。ちょっとした騒ぎはすぐに落ち着き、また自分の世界にそれぞれ没頭する人達。  暖はぽつんと取り残され、完全に勉強モードは消え失せ一点を見つめながら力無く座った。 何が何だかわからなくてしばらくそこから動けずじっとしていた。  ピロンっとメッセージが届く音が聞こえてもしかして明希かもしれないと手を入れて取り出して表示を見ると大我からだった。  "電話切れたね。まだ授業中だった?" "ううん、もう学校終わってる。電話したの?ごめん気付かなかった"  "メッセージと電話したよ" 大我はついさっきの数秒の通話出来事に軽く触れ文章にしたが、暖はそれには特に気にする事無く耳からスマホを離して届いたメッセージをスクロールで戻り確認した。  "ごめんメッセージ今見たよ。時間変更大丈夫だよ。それなら何時に行けばいい?"  "ありがとう。今回はお店での撮影だから許可の電話取ってからまた連絡するよ"  "うん ^_^" さっきまで顔も身体も硬直していたのに大我と少しメッセージをやりとりするだけですーっと顔も心も自然と弛緩していく。  試験の事も明希の事も今の暖にはすっぽり頭から消え失せて、すでに明日の事で頭がいっぱい。そして何より大我に会えるのが嬉しい。  暖は以前にも増して配信の世界に夢中になりどんどんのめり込んでいた。それは大我に対する気持ちも同様で"偽彼氏"は嫌だ。一緒にいるうちにじわじわと気持ちが膨れていき、それ以上の関係になりたいなんて不覚にも思ったりした。  暖は本気で大我を好きになっていた。  恋が何かも知らない19歳の夏の終わり。  図書館の机に突っ伏して重なった参考書に頭を置いて、スマホ画面を見ながら好きな人からの返事を待つの時間はこんなに幸せなのかと暖は初めて知る。  勉強、友情、恋そして夢。 いくつも折り重なるそれらの最大の試練が目と鼻の先まで迫っているとはこの時まだ暖は気付かずにいた。

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