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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される⑪
明希は思ってる事をそのままマコトに言い当てられ、心の中を見透かされる事に悔しさと驚きが合わさって強くいい返す。
「初対面でいきなり俺のことなんも知らん奴に言われなあかんねん」
「へえ、あの二人の配信は賛成派なんだ?」
「賛成とは言うてへん、、」
"乾くん?"といつもよりゴミ出しに時間がかかっている明希を先輩が探してる声が聞こえた。ゴミ出しが終われば後は終礼をし着替えてお店を出るだけ。マコトの事はどうしても生理的に受け入れらないけれど、正直言って同じ考えである事は否定しないしある意味で仲間同士かもしれない。
「戻らなあかん。道路向かいのコンビニに15分後にいく」
「あーあそこね、待ってるよ」
23時を過ぎれば周りの会社ビルはもちろん閉店時間を迎えたスーパーや飲食店の電気は消え、道路挟んで目の前にあるコンビニだけが明々と存在感があった。ここは先輩や同僚の目が気になるし少し遠ざけて話をしようと、ぶっきらぼうに言い捨てて明希は店内に戻って行った。
時間通り15分経つ頃に私服に着替えた明希は、交通量の多い道路横切りコンビニに向かって歩いて行く。店前で電子タバコをふかすマコトの姿が見え、広い駐車場に止まっている車の隙間を歩きながら近づいた。
「どーも。俺と話す気があるみたいでよかった」
「別にあんたに興味あらへん。ただ暖に纏わり付いてんのも気になるし、忠告はしとかんとな」
「あぁ図書館の事?あれなら別に大した意味はなくて、ただ相手を知らない事には始まらないと思って」
「変な気起すなよ。暖に何かしたら許さへんからな」
明希の威嚇する様な目を冷静に見ながら深く電子タバコを吸いこんで煙をゆっくり吐いた。コンビニを出入りする客が気になり"あっちへ"と目で合図し二人は人気の少ない駐車場奥へと移動した。
「大丈夫、別にそんな気はない。ただ滝川暖のあの投稿で大我には振られ配信も終了。それ以降、大我には連絡も拒否られ会いに行っても無視されてどうしていいか」
「あんた自業自得やろ、暖のせいにすんなや」
「そこは自分の落ち度もあるし故意ではないだろし恨んではいない。いわば巻き込み事故みたいなもんで、問題なのは何であの二人がその後に恋人として配信してんのかって事」
「それはー…こっちが聞きたいわ。俺やって頭こんがってんねん」
「あれ、てっきり君には相談して始めたのかと思ってたけど知らなかったのは意外だな、毎日学校で会ってんのに?」
「うっさい!!」
しかも知ったのは偶然大我との電話でたった数日前。しかし配信は3ヶ月から始まっていた。マコトの言う通りこの何ヶ月でタイミングはいくらでもあって話せない筈はない。今まで些細な事でも相談して頼って来る暖の一番の理解者でいたつもりでいたのに。
暖が変わってしまった。自分から離れてしまった。今はどうしてもこの現状をそういう方向にしか捉えられなくて喪失感が拭えない。
「ってか、話あんねんやろ?終電あんねん」
「ああそうだ、単刀直入にここに来た理由を言うと俺たち手を組まないか?」
「、、は?何や意味が分からへん」
「俺は大我とよりを取り戻したい。君は滝川暖の配信を辞めさせたい。それなら目的は同じだろ?」
明希にとってマコトは心底気に食わない関わりたくない奴だけど持ち掛けた内容は無碍 にはできなかった。
「手を組むって二人を引き離すってことやんな?どうやってー…ホンマにそんなん出来るんか」
「その反応は承諾すると考えていい訳?」
「言っとくけどな、あんたと一緒にすんなよ!俺は暖の為に辞めさせたいねん。浪人生にとって遊んでる時間なんてあらへん。どうせ配信やって大我ってやつに無理言われて、断りきれんでやっとるんやろ」
「さぁね。それは俺には分からないけど」
「顔隠してやってんねん、絶対そうに決まっとる。暖は授業で皆んなの前で発言するんでさえ緊張するようなやつなんや」
俺の知っている暖はまだ取り戻せる。あの投稿の炎上で自責の念にかられ、やむを得ず配信なんてしているだろう。それなら自分が救ってやらないと。
明希はマコトの提案を受け入れ組むと決めた。
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