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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される⑬
「そう俺、大我さんが働いてたホストクラブのホスト。Zeal Nineの星夜 っていうんだけど」
言わなくても髪型や格好、人慣れしている話し方からホストだとすぐに気づく程この繁華街に馴染んでいる。完全アウェーな暖も大我の知り合いとなると少し気を許した。
「あれ?もしかしてホストやってたの大我さんから聞いてない?、、ヤバっ!俺喋りすぎ!?」
『あ、いえ聞いてます』
「良かった〜!ところでここで何してたの?」
『あー…ちょっとこの近くに用があって終わって帰るところでした』
こんな場所なら嘘や詐欺紛 いな事もあるかもと警戒はしたが、訊いたお店の名前は確かに大我が働いていたお店に間違いない。それに知り合いでもなければ、二人の配信を観るはずもなくて暖を知っている訳もない。
「そうなんだ!あーゆっくり話したいんだけどもう行かないと。うちの店厳しくて遅刻すると罰金なんだ。じゃ気をつけて、そうだ!たまには連絡下さいって大我さんに伝えといて欲しいな」
『あっ!あのー…お店って近くですか?』
「そうだよ、もうすぐそこだけど」
『ちょっとお店行ってみたいなー…って。未成年は入れませんよね、、?』
ギラギラして男女の欲望が渦巻く不夜城。大袈裟ではなく暖にはそんな遥か遠く未知の世界がホストクラブ。怖さもあるが今まで大我がどんな場所でどんな事をしていたかが知りたかった。
「えっ?店に?うーんとお酒は飲めないけど18歳以上なら入れるよ、身分証はあるかな?」
『あ、あります!あっ、、でも所持金が。いくらあれば大丈夫ですかっ?』
「大我さんの彼氏さんからお金なんて取れるわけないよ。今日は俺からのサービスって事でいいよっ。じゃ行こうか」
星夜の言う通りお店はその場所から目と鼻の先ですぐに着いた。ビルの5階にお店があると言って後ろを付いてエレベーターに乗った。自分から行きたいと言い出した事を少し後悔する程緊張して、暖はただ上っていく階数ランプを見ていた。
"いらっしゃいませーー!"扉を開けた途端飛び交う威勢の良い声と大音量の音楽、鏡張りの壁に照明が交差して余計に眩い店内。
躊躇しながら進む足元はフカフカと弾力のある赤色のカーペットが敷かれ、そこ過ぎるとフロントの内勤スタッフ視線がこちらに向いた。
「おはようございます」
明るく挨拶する星夜の歩く後ろを歩く暖に気付いたスタッフ。女性ではなく男でしかも若い、それもホストクラブで一番来店しないタイプの着飾っていない地味めな男子。
「新規のお客様?」
「まぁそんな感じっちゃ感じなんですけど知り合いって言うか軽く見学的な感じで」
「見学?ここで働きたいの?」
『と、と、とんでもないですっ!!客です、ただの客です!』
突然大声で必死に否定をした暖は勤務希望の学生か何かと勘違いされたらしい。
「いらっしゃいませ。大変失礼しました。ではこちらへどうぞ」
フロアから歩いてきた別の男は一連のやり取りを訊いていた様子で丁寧に穏やかな口調で言った。フロントの二人とは別格のオーラをまとった男は星夜と暖を端の壁際の静かな席へ案内した。
広いフロアは半分ほど席が埋まっていて、女性客とホスト達が隣に座りかなり近い距離で話しをしながらお酒を飲んでいる。これぞ大人の社交場に雰囲気にさらに身を縮めて革製の高級そうなソファーにちょこんと座った。
"ごゆっくりどうぞ"と軽く会釈して立ち去る男に大きく会釈を返す暖。
「どうホストクラブの雰囲気は?」
『何て言うかー…テレビで見た世界で僕には一生縁のないようなところです』
「そう?俺からしたらフォロワーが200万人いて全世界の人が見る配信をする方がすごい世界だと思うけどなぁ〜」
『別に僕の力じゃないんで、、』
内勤スタッフがおしぼりを持ってオーダーを訊きに来るが、すかさず聖夜が説明をしてソフトドリンクを注文した。
「とりあえず短い時間だけど楽しんでってよ。って言うかここに来ようと思った理由、ズバリ当てようか?」
『えっ、、理由?』
「大我さんの昔の事を知りたかったからじゃない!?分かるよ〜恋人の過去とか知りたくなるもんねーだけど安心して。ここのキャストと大我さんはそういう関係になった事はないから!」
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