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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される⑮
『えっ!で、出会いー…ですか!?』
「だって大我さんと君が結びつかないもん。どう見ても夜の世界の人間じゃないでしょ?しかも未成年の学生さん。だからどこで出会ったか気になるんだよね〜」
星夜の何かを期待する視線を受けて初人は目を逸らした。自慢げに言える様な出会い方ではない、寧ろ軽蔑されかるかもと躊躇した。
『えっと、、その、、』
「その感じだとあんまり聞いたらダメだったかな?大丈夫!誰にも言わないし俺口硬いし、同性愛とかには理解ある方だからっ」
『いやっそうゆう問題では無くて、、』
「お話中失礼します。星夜さんお願いします」
「あっ、ん?」
入り口に目をやると黒ロングの髪に白いフリルをスカートを揺らして星夜に手を振る若い女子が見える。それに応える様に星夜も元気に手を振り返し、両手を揉み合わせて暖を顔を前に出した。
「ごめ〜ん、姫来ちゃったから行かなきゃ」
『姫??』
「俺指名のお客さんって事!じゃっまた」
『えっ!あっ、僕はどうすれば!?』
「他のキャスト呼んで来るからさ楽しんでて。大我さんには及ばないけどイケメン揃ってるからっ」
『いやっ、ちょっと聖夜さん!聖夜さーん!』
星夜はスーツの乱れを直しピシッと髪も整えて姫の元へ行くと軽くハグして腕組みしながら席に着いて親しげに話し始めた。見る限りかなり常連の様で、見てる側が恥ずかしくなるくらい密着して甘いムードが漂い始める。
暖といた数分前とはまるで違う"ホスト"という仮面をかぶって姫に一夜の夢を見せる。
『やっぱりすごいなあ、、No.3って。ああぁ違うっ、感心してる場合じゃない!どうしよう…… 一人になっちゃった』
「お隣よろしいですか?」
横に感じた気配に顔上げるとこの席まで案内してくれた別格オーラをまとった男が立っていた。他のホストに比べるとベテランの雰囲気とが低音の声に落ち着いた話し方に逆に緊張して身が縮こまる。
『えっ、っ、あっはい』
「このお店の代表、如月詩音と言います」
『代表さん?……ですか。なんかごめんなさい!大したお金も持ってないのに来てしまって!でももう帰りますからっ』
「気にしないで下さい、星夜に聞きました。お客様は大我のパートナーだとか。そんな大事なお客様は、何のおもてなしもなく帰す訳にはいかないですから」
"大我"と呼ぶ辺りからして親密さを感じる。詩音は空っぽのグラスを見てドリンクの追加を持ってくるようにとスタッフに指示をした。
暖の隣に座ると香水の香りをふんわり漂わせながら優しい表情で会話を始めた詩音。
遠くから暖のテーブルを見る待機中のキャストがざわつき始める。普段見る事のない詩音の接客は相当興味深い。プレイヤーを退き代表と言う立場になると滅多に客につく事はなく、若手新人ホストからすれば初めて目にするに等しい。
「あっれ?見てみ、詩音さんが席についてる」
「マジじゃん。あの客って星夜が連れてきた客だろ?詩音さん直々に席に着くなんて珍しすぎじゃね?あの客誰なんだ?」
詩音が自ら席に付いたあの若造は誰だ?と裏で密かに話題になっていた。大金を落とす太客には見えない所が更に気になる若手達。
『あのう、、大我とは仲いいんですか!?』
「そうですね。大我がこの店に居た時は何て言いますか同僚でもありライバル関係でした。いわゆる二人でNo.1を争いをしてた訳です」
暖は届いたジュースのストローを手でコロコロと動かして気を紛らわし、ハンサムな顔した詩音の顔を時々チラッと見ながら話を訊く。
「ところで大我とカップル配信をしてるとか?そうゆうの疎くてごめんなさい。ただ先程少し検索して見せてもらいました。顔を隠してるから分からなかったですけど。どうして隠してるんですか?」
『あー…その辺は色々とありまして、、』
今回2度目の頭を悩ませる質問が飛んでくる。大我との出会いから、恋人役として配信に至るまで何一つ胸を張って言える事は無いから。
それにホストクラブと言う場所柄どこで誰が訊いているか分からない、噂なんて瞬時に広がる予感がして怖くて言える訳もなかった。
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