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#スイーツ男子の試練は冷たく口溶け易いババロアのように試される⑳

 余程の確信があったのか何の躊躇もなくさらりと言った詩音。  「何も言わないのは図星だからか」  「何言ってんだか。勝手にペラペラ想像喋んなよ、反論する気も起きないね」  詩音は窓の側に立って暖の席の方をじっと見つめる。周りには目もくれず与えたスイーツだけを満足そうに食べている暖を見ていると、余計に二人の関係に疑問しか湧かない。  「彼はまだ19歳の学生だって?それに夜の匂いも一切しない。誰がどう見たって違和感しかないだろ。それに何よりお前が同性愛者ってのは、、無理があるんじゃないか」    笑みを浮かべて振り返り大我を見る詩音は言い返せるものなら言い返してみろと言わんばかりの表情だ。ソファーに座る大我は一呼吸した。  「星夜は何て?」  「あいつは信じてるよ。初めはお前があんな形で配信始めた事に驚いてたけどな"今は多様性な時代っすから!"なんて言ってさ今でもお前のようなホストになりたいって言い張ってるよ」  入店してから星夜はずっと大我の背中を見ながらホストの憧れだとずっとくっ付いていた。 大我も可愛がっていたが、そんな聖夜にも何も言わずに去って行った事にしこりが残る。    「そうだよ、詩音の言う通り暖とは配信用の関係だ。いわゆるビジネスカップルで実際には付き合っていない」  「ほぉ、やけに素直に話すんだな」  全てお見通しで隠せない相手だと観念したのか意外にもあっさりと素直に打ち明けた大我。この店には恩恵もあり、それにもう嘘つくのにも疲れてきた頃だ。  暖は辺りを一向に気にする様子もなく、ただひたすら目の前のスイーツを食すのに夢中だ。それはまるでSucre Poupéeの店内で食べているかのようで、ホストはエプロン姿の店員で姫達はスイーツ好き女子達のグループに変化する。派手は店内音楽はヒーリングミュージックに、テーブルのお酒は紅茶に化ける。  「ふっ見てよ、あんな場所に一人でいるのに誰も寄せつけない自分だけの幸せな空間にすぐに変えられる」  「確かにあんなに居心地悪く帰りたがっていたのがスイーツを目の前にするとまるで人が変わったようだな」  そんな会話がされてると知る由もない暖は全て平らげる勢いで食べ尽くしていく。夢に見た名店の味は想像以上に身体中を甘い幸せが包んでホストクラブと言う場所を完全に忘れている。 周りのホスト達も食べてる間は近寄れないオーラを感じて、ただ見ているだけだった。    「何だろう。今まで俺の生きてきた世界に暖みたいな子に出会った事は無かったから最初は物珍しさで近づいたかもしれない、ただの興味本位で」  「その言い方だと以前はそうだが今は違うってように聞こえるな」  すかさず詩音の鋭い指摘が入り大我は黙った。もうこれ以上隠し事しても無駄だし詩音に本音を話したことで数ヶ月の間、世間に嘘をついて配信していた日々に積み重なった肩の荷がスッと降りたような感覚があった。 それから大我の口からは本音が次々と漏れ出す。  「初めは一時的なビジネスパートナーを探していて。正直言うと配信はやり続けることに意味があって少しでも間が開けば、視聴者は他の似た配信者の方に流れる。だからすぐにでも相手を見つける必要があって誰でもよかった」  「誰でもいいならもっと近くに適任はいくらでもいただろ、お前ほどの人脈があれば」  「、、それが自分でもわからないんだ。暖のSNSを見て興味が湧いて誰が書いてるんだろうとスイーツに興味のない俺がなぜか気になって」  それから大我は詩音に暖の出会いから配信を初めて今日までのことを話した。  「なるほど。出会いだけ聞けばドラマのような話だが実際はどうなんだ?受験生にとって今1番大事な時期だろう。こんな事させてていいのか?」  「本来ならすでに見切りをつけないといけない時期。暖の為にもそうしないといけないと思ってる。だけど、、手放したくないと思っている自分がいる」  「それはー…つまり今はあの子の事、、」  「だからもうこれ以上深入りしてしまう前に終わりにしなくちゃいけない」

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