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#スイーツ男子の失恋はラムレーズンの熟した悲観と未来への調和④
二人の真後ろから聞こえてきた野太い声にビクッと体を同時に揺らした。この予備校一厳しいと言われる講師がジロリと二人を見ていた。
「ああ〜おはようございますッ、先生」
「指導室なんか覗いて何を見てたんだ?」
「あ〜っと……別に、、ねぇ明希!」
「ただ友達がおったんで何やと思って見とっただけですよ、心配したらあかんのですか?」
冷静に言い返すと講師は二人の間に入って部屋の中を覗き自らの目で暖が居るの確認し明希を見た。今なら怖い講師であろうが、誰にでも噛み付くオオカミのように攻撃的になっている明希。それに少し圧倒された様子で"早く教室入れ"と言って去っていった講師。
「あ〜あ、何でよりによってあの先公なの?けどさ明希もスゴイね、あんな感じで言い返して。やっぱり今日なんか変!」
「変なのは俺やなくて暖や」
「えっ、まあ暖の行動も最近変な気はするけど、、二人とも何かあったわけ?」
「どやろうか。俺にはもう暖の考えてることが分からへんわ。親友なんてもんは大した存在やないねんな」
「何それどういう意味?」
「何があったかはすぐ分かるはずや」
「は?あっ、ちょっと明希待ってよっ」
意味深な言葉を残して教室に入っていく。それから5分もしないうちに暖が教室に戻ると、すぐいつもと何ら変わらない授業が光景が始まった。
明希は後ろの席の暖が気になって時折り目線を向けるが机の下のスマホを弄り相変わらず授業には集中していない。
暖の頭の上にポンポンと十数枚のプリントが跳ねて顔を上げると、明希が"これ後ろに回せやて"と顔を前にプリントの束を差し出した。
『あっ、ごめん!気づかなかった』
「何を必死に見とんの?」
『、、べ、別に何でもないよ』
サッとスマホ隠して電源を押して黒い画面に変わった。チラッと見えた画面にはケーキ写真や白い服を着た人が映っているのが一瞬見えた。どうせまたどこかのスイーツ店でも検索していたのだろうと明希は思っていた。それにしては随分と字が多く書いていたけれど。
「共通テストがあるってのに余裕やな。その余裕少し分けて欲しいくらいや」
『全統共通ー…テスト模試?』
「大学の本番入試を想定した模擬試験や。さっきそう先生言うとったやろ、何も聞いてへんな」
手にしたプリント一番上の太字を読みながら何の事?と無関係ですと言わんばかりの顔した暖に少し冷たく明希が言うと申し訳なく"ごめん"と呟いた。
「なぁ今日時間あるか?カフェ行かへん?」
『ん?今日?特に予定は無いけど、、』
「共通テストあるし、今のうちに景気付けってことで何か奢ったるわ!」
『いいの?』
「多少高くてもええで、バイト代結構でてん」
『じゃ行く!』
「ほな決まりやな。行く店考えといてや」
思えば大我と配信を始めてから明希と出掛ける事が無くなっていた。唯一の友達といっても過言ではないがそれを上回る恋人と言う存在が出てきたらそうなっても仕方がない。
かと言って友情が無くなるわけではない。だけど暖に対するの気持ちはそれを超えてしまっているから擬 かしく苦しい。
せめて本当の事を暖本人の口から聞きたい。
マコトとの計画はそれ次第で決めようと考えた。
授業が終わり二人は約束通り暖の希望するカフェに向かった。それまでは週に3回はこうやって授業終わりに二人でスイーツレビュー投稿の為に来ていたなっと、歩きながら明希は横目で楽しげにルンルンと軽快に歩く暖を見ている。
到着したカフェは人気店ではあるものの並ぶことなくスムーズに席に通された。
「うーんと、わっ!これ美味しそう!こっちもいいな〜期間限定?それならやっぱりこれかなー」
『はぁ、、閉店時間まであと2時間やで。それまでに決めれるか?』
「またそんな意地悪言ってさー」
カフェに来るといつもこうして暖を揶揄 い反応を楽しんでいた。そんな前の話でもなく懐かしむほどではけれど状況が変わりすぎて、数ヶ月前が何年も前のように思える。
ようやく注文が決まって店員に伝える。悩んだ挙句最後まで迷っていた3種類のケーキを注文し、それに明希の奢りとなれば容赦なくドリンクも3種類。もちろん暖の一人分だけでこれだけの量だ。
ケーキが届くのを待つ間いつもなら店内を見渡して写真を撮ったりレビューノートを書いたり忙しくしていたが今は静かに待っている暖。
『この店さ、一昨日テレビに出ててチェックしてたんだ!まさかこんな早く来れると思ってなかったから嬉しいな」
「……なぁ、もう投稿せえへの?」
『えっ!?投稿ってスイーツレビューの?あ、アレはだって色々あったじゃん、、明希も知ってるでしょ」
「知っとるけど時間経ったしもう書き込みし
てくるやつおらんやろ?そいつらももう他に関心がいっとる、SNSは所詮そんなもんやからな」
『んー…だけど今はいいかなって、、』
「そうか、あんなに夢中にやっとったのに。飽きたんか、それとも他にやらん理由があるんか?」
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