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#スイーツ男子の失恋はラムレーズンの熟した悲観と未来への調和⑤

 明希は回りくどく攻め込んで質問をする。誰も愛する人を困らせる質問や行動なんてしたくない。だけどこれも暖ことを思っての事。 暖を歪な世界から救えるのは自分しかいないと明希にはただその使命感に駆られる。  『えっ、?べ、別に他に理由なんてないよ!、、何でそんなこと聞くの!?』  「投稿してみんなに反応もらってフォロワーが増えていくんが嬉しいって言っとったやん。目標の300人も達成したって」  『いや、だって300人なんて全然。今思えばなんでそれくらいで喜んでたんだろうって』  「……そうなんやな。ただ俺はそれに喜ぶ暖がええなって思っとったけどな」  『えっ、?』  明希はどこかで信じたかった、暖は内面までは変わっていないと。あの時の300と言う数字はもはや過去で、それが今では一万倍の300万人のフォロワーを持つ。 自分で作り上げた300と既に用意されていた300万人は暖の中では違うと言って欲しかった。  "お待たせしました!ラムレーズンパウンドケーキのお客様"店員が二人の沈黙の間に割って入りお皿を置く。三往復してやっとすべての注文か揃ってテーブルをいっぱいにする。  『、、明希、何か話あって誘ったん…』  「おっ!どれも美味そうやん。それ半分分けてーや。いらんと思っとったけど見たら食べたくなったわ」  『あ、うん。もちろんいいよ」  フォークをケーキの真ん中に刺し半分にして明希の皿に置いた。柔らかいホイップクリームがついたフォークもそのままお皿に置いて少し様子が違う明希の目を見てスッと差し出した。  「話ならあるで」  『……何?……』  「陽くんの足のケガどない?まだ入院中か?」  『えっ陽!?あー…もう退院をしたけど、、話ってその事?』  「そうや、何や気にしたらあかんか?」  もしや配信の事かもしれないと疑って身構えてしまった暖はほっと胸を撫で下ろした。  『そんなことないよ!心配してくれてありがとう。ギプスはまだ取れてないけど、お母さんが送り迎えして学校にも通ってる』  「そっか、良かった。そう言えば陽くんが入院しとった病院、偶然にも俺のバイト先のすぐ近くやってん。それでな暖のお母さん来たことあったんやで」  『そうなの?知らなかった』    分けたケーキを口に入れて暖はルンルンと鼻歌が聴こえてきそうな表情をしながら話半分で会話をする。甘さが口の中を支配しているときは他のことを頭に入らない。  「それでな、その時に暖のお母さんに言われてん。この間は暖を家に泊まらせてくれてありがとうって。やけど考えてみれば、うちに暖は来た事ないやんな?」  『えっ、、?お、お母さんがそんなこと言ってた?な、な、何でだろ??ちょ、分かんないや』  さすがに雲行きが怪しく話半分で聴く話ではなくなってきて口の動きを止めた暖。慌ててごまかそうとそれはするほど、呂律も回らなくなり無理な弁解になる。  「うちに来たって言ってへんって事か?」  『えっとー…あっ!そっ、それ思い出したっ。その日ね高校の友達の家に遊びに行ったんだけどっ、夜遅くなって泊まる話になって。お母さん心配性だから知らない友達だと誰?ってしつこくてさぁ、、だから明希って言っちゃたんだっけ。多分それだよ!』  「高校の友達?あれ、高校で仲良しな友達誰もおらん言うとったやん」  『ひ、一人くらいいるよ!たまたま連絡きて久々にって話になってー…』  「それで泊まるまでなるんや」    全てを知っている明希にとって暖が言い訳をすればするほど辛くなる。どうしても大我の存在は言いたくない、関係を知りたくないと意思を強く感じるから。そんなにも暖にとって大我は大事な存在なのか。  『名前出してごめん。お母さんも明希なら安心するしさ』  「そうか、そういう事やったんや。まぁ信頼されとるのは嬉しいことやしな。ほな話終わり!早よ食べよ、これ全部食べきれるん?」  『当たり前じゃん。ずっと僕が食べてるの隣で見てたんだから知ってるよね』  「そやな」  "これからも側におってええか?"明希は口には出せない声を胸の奥にしまった。こんな時間が永久にに続けばいいのに。 そう思うと余計に大我が邪魔な存在で仕方ない。 明希はフォークを持ってクリームを口に入れた。この甘さを暖と分け合えるのは自分だけでいい、邪魔な虫は駆除するしかない。  食べながら講師の愚痴大会なんかで盛り上がり閉店時間にお店を出て駅で別れた。家に着いて時刻は21時過ぎ、明希はベッドの上に座って電話をかけた相手はマコトだった。  「ええで、今から写真流しても」

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