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第5話

長いようで始まってしまえばあっと言う間のGW。 まだ実家に世話になってる身の俺。 甥っ子が生まれてもう5年にもなるって言うのに 未だ初孫フィーバーの続く父ちゃん達は 姉ちゃん夫婦と旅行に出かけたが 俺はそれには参加しなかった。 次の日展にはチャレンジしてみようかと思ってるから それ用の作品に取り掛かりたかったし 隣の岡田に頼み込まれたイメージキャラクターたるモノを考えきゃいけなかったから。 幼馴染の岡田とは家が隣同士なのもあってか物心ついた頃からの付き合いだ。 人のことは言えねぇけど・・・ あいつも30過ぎたって言うのに独身で 俺と同じく実家にお世話になってますの身。 外資系の保険会社に勤務してるらしいが 互いに仕事の話はあんましねぇから詳しくはわかんねぇけど 何やらその会社のイメージキャラクターを作るとかで 一社員に一デザイン提出が命じられたらしい。 そこで何故か白羽の矢が立てられたのが俺。 毎朝、照らし合わせてもねぇのに何故か一緒になる俺と岡田。 数日前、最寄の駅まで他愛のない話をして歩いてたら どう転んだらこうなんだよ?みたいな感じに話は進んで 「西野・・・お前、美術の教師やってんだろ?頼むよ~」 この岡田の情けねぇ声で頼まれると俺もつい甘くなっちまって。 何時もピシッとスーツを決め込んでる岡田がこんな声だすなんて 相当、参ってんだなと感じ引き受けたのだ。 何時もはアクリルや油絵を主に背景とか人物を描いてる俺。 それが・・・キャラクターなんて。 しかも社のイメージってなってくると何がなんだか・・・ いい加減煮詰まってきてたのもあって コーヒーでも飲みながら一服でもするかと背伸びをしたら ベッドの上に放り投げていたスマホが鳴り手に取れば 芹沢 豪・・・理事長からだった。 電話にでれば一言。 「何時ものホテルに来い。  811号室だ」 通話は俺の返事も聞かず一方的に切られた。 俺はクローゼットから淡いブルーのジャケットを選ぶと 指定されたホテルに向かった。 ホテルに着くと部屋に直行しベルを鳴らせば スッと開いたドアから伸びた腕に引き寄せられる様に中へと導かれ まだ、完全に閉まらぬドアの前で抱きしめられ唇を奪われる。 ガチャリ。 鈍い音がした頃には舌が口腔を這い回っていた。 「・・・んんっ」 執拗なまでのキスで息が出来ず、苦しくなり彼の厚い胸を押せば 「悪い、ご無沙汰だったからな・・・」 悪びれた風もなく言う。 だから・・・ 「良かったんですか?  GW最後の日なのに・・・」 言ってやれば 「あいつとの旅行は疲れた。  やっぱりお前がいい」 彼より背の低い俺の顔を覗き込むように見つめられ カラダの奥がカッと熱くなった。 それを感じ取られたのか性急にその場で服を剥がされると 縺れる様にして二人でベッドになだれこむが・・・ 急いで出て来たせいで俺は何の準備もしてきていない。 なのに、一秒でも早く俺の中に埋め込みたいのか 彼のごつくて太い指が蕾に触れ 「だ、め・・・シャワー浴びてきてない」 身を捩って訴えれば逞しい腕に抱き上げられた。 ビジネスホテルなんかとは違いやたらと広いシャワールーム。 セパレートになっている硝子で囲われたシャワー室に連れ込まれるなり 勢いのあるシャワーを直にそこへと中てられ 「ああ・・・っ」 声が勝手に唇からもれてしまう。 その声に「お前の声・・・最高だ」と耳元で囁かれながら ボディーソープを絡めた指がソコにツプリと埋め込まれた。 硬く鎖した蕾を解すように指が動き 「俺が日本にいない間、此処は使ってなかったんだな」 厭らしい笑みを浮かべて言われ、それに「バカ・・・」と返せば 「お前って、さみしくなったら誰彼構わず脚を開いちまいそうで  パリに行ってても気が気じゃなかったんだぞ」 その言葉にこの休み中に奥さんとパリに行ってたんだと シャワーの湯と内壁を広げるような・・・ 言葉とは裏腹な容赦ない埋め込まれた指の動きに キスをされてから跳ね上がっていたカラダの奥を燻る熱で 白くなり始めていた頭で考えてたら 熱い塊が宛がわれ一気に中へと挿入してきて 奥深くを突かれ激しく揺さぶられれば 俺の思考はどっかへぶっ飛んじまい 気づけば俺の唇から引っ切り無しに喘ぎ声がこぼれた。 声が枯れるほど啼かされ 激しく上下に扱かれ幾度彼の掌中に白濁を放ったのか 思い出せねぇ・・・ ドロリと熱いモノが俺の中に吐き出された頃には 俺は・・・ 意識を手放していたらしい。 気づけば独りベッドの上。 サイドボードには彼からの走り書き。 『疲れただろ?  部屋は一泊取ってある。  このままお前は泊まっていけ』 文字を眼で追い終わると俺はそのメモをグシャッと握り投げ捨てた。 抱く前には甘い言葉を囁くくせに事が終われば・・・ これかよっ! あの人・・・ 奥さんの尻に完全に敷かれてるよな。 俺と理事との関係。 何でこんなことになっちまったのかわかんねぇ。 酔った勢いだったっけ? あれは・・・ そうだ、その時付き合ってた? いや・・・ カラダの関係があった奴って言うのが正しいのかも。 そいつに突然別れを告げられて・・・ 何人目だった? もう、それもわかんねぇや。 さっき、あの人が言ったようにさみしくなったら誰彼構わず抱かれてたし。 そん中の一人にあいつと同じ 「俺、彼女が出来たから抱けない」 なんかそんなこと言われて。 俺、そいつのこと好きだったのかなぁ・・・ それも忘れちまってるけど バカみてぇに酒を煽ったのだけは憶えてる。 多分、あいつと同じ『抱けない』って言われて そのキーワードのせいでおかしくなってたんだと思う。 普段なら絶対に行かねぇようなバーでしこたまウイスキーを飲んで 気がついたらベッドの上で裸であの人とSEXしてた。 バックで背中を覆われるようにしてイイところを突かれて喘いでる時は 酒と腰から脳髄まで痺れるよう快感に酔ってて学園の理事だなんてわかんなかったし。 事が終わった後に西野先生と声をかけられた時には流石に腰が抜けたが 「キミの事、ずっと狙ってた」 そうあの人に言われ 俺なんかがなんであの学園に採用されたのかわかった気がした。 あれから3年か・・・ 俺にしちゃめずらしく続いてる関係。 カラダの相性が良いのか それとも俺が彼にとって都合の良い相手だから続いてんのか 知んねぇけど・・・ 「あははは・・・」 笑ってみた。 あまりに虚しくて。 けど・・・ 笑えば笑うほど虚しさが増して。 俺が好きになる男はこんなんばっかだ。 結局、女に取られちまう。 風の噂であいつも家業を継ぐために結婚したとか。 その為に俺は捨てられたのかどうか・・・ あいつに訊きたくても 『俺さ・・・やっぱ真くんのこと、もう抱けねぇや』 そう言われた日から携帯の番号もメルアドも変えられて 俺から一切連絡が取れなくなっちまったから それも・・・ わかんねぇまんまだ。 俺が悪いのか? それとも・・・ 相手が悪いのか? いや・・・ 俺に・・・ 見る眼がないだけか。 俺はベッドから起き上がるとあまりの激しいSEXで 重くてだるいカラダを包んでいた俺には場違なバスローブを脱ぎ また、何時もの画材の香りが抜けない服に着替え部屋を出た。 この時はまだ・・・ まさか、あいつに・・・ しかも、あいつが俺を好きだと騒いでるヤツの父親だったと知らずに 俺は・・・ 忘れられない初恋を想い胸を痛めて そう・・・ どんなにイかされても満たされず あいつに抱かれていた時が一番幸せだったって そんな感傷に耽ってたバカみてぇな俺。 そんなバカな俺を・・・ 現実と言う名の無慈悲なヤツにこの後、直ぐに打ちのめされ 幼い恋の淡い想いなんか粉々にされるなんて この時はまだ・・・ 俺は知らなかった。 部屋のカードキーを返す為にロビーに寄り、疲れからソファーに身を沈めていたら 『西野ちゃ~ん』 聞きなれた声。 そして 『・・あ、父さん・・・』 渡り廊下で五月蝿いヤツの片割れの声。 その声の先には・・・ ずっと・・・ 会いたいと思っていたあいつの姿。 俺の唇は勝手に 『・・先・・生・・・?』 そう動いていた。 櫻川・・・ 偶然の一致だとしても・・・ まさか・・・ こいつ等の父親があいつだったなんてこれぽっちも思ってなくて。 この十数年・・・ 会いたくて、会いたくて堪らなかった 好きで、好きで堪らなくて ずっと忘れられなかった あいつの名を 俺は・・・ 疑問詞で呼んでいた。

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