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第7話

「真くん、行こっか・・・」 会いたくてたまらなかった彼からの誘い。 これが何を意味するのか頭ではわかってた。 — また、騙される・・・ — また、傷つけられる・・・ わかっててNOと言えない・・・ 情けない俺・・・ 「久しぶりの再会だから、もう少し真くんと話してから帰るよ。  お前達は先に帰ってなさい」 柔和な笑みで けれど・・・ 有無を言わせぬ声で 先生・・・否、櫻川は戸惑いを隠せないような顔をした3人を 待たせてあった車に乗せた。 運転手付の黒いリムジン・・・ ああ、やぱっり・・・ 母ちゃんが言ってたのは嘘じゃなかったんだと実感する。 車が視界から消えると後ろに立つ俺に一言。 「部屋、とったから」 俺はその言葉にビクンとなる。 それを見て笑った彼が 「真くん、行こっか・・・」 あの夏・・・ やたら五月蝿い蝉の声に混じって 当たり前のように俺の腕をひっぱりラブホに連れ込んだ時みたいに 彼が俺の腕をとり出てきたばかりのホテルの中へと連れ込む。 — また、騙される   — また、傷つけられる — そしてまた・・・棄てられる 頭の中でそう警報が鳴り響いてるのに 俺が好きでたまらなかった笑顔で 俺が忘れられなかった甘い声で 彼に誘われると 俺はまるで催眠術にかかったように 彼の笑顔に 彼の声に いいなりになっちまって・・・ 気づけば・・・ ベッドの上で・・・ 互いに一糸纏わぬ姿になって縺れ合ってた。 バックから腰を持ち上げられ 双丘を左右に開き窪みを指で突きながら 「解れてるね・・・  誰かに抱かれてたんだ・・・  食事中も気だるそうに色香振りまいてたし・・・  なんか、俺・・・そいつに焼けるかも・・・」 俺を棄てた癖に勝手なことを言う。 その癖、何の躊躇いもなくソコに舌を這わせ 「やっぱり・・・そいつに生でさせてんの?  さっきまで抱かれてたのにゴムの匂いしないね・・・」 そう言ってヒクつく蕾の中へとザラついた舌が挿し込み 蠢く内壁を舐め上げる。 「・・ッ、嫌な、ら・・・舐めんな・・・よ・・・っ」 与えられる快感に吐息を吐きながら反撃してみるも 「いや・・・却ってそそられるかも・・・・  俺がそいつの痕跡を今から上書きしてやるみたいで」 金持ちの坊ちゃんの癖に 母ちゃんから聞いた通りなら・・・ 今じゃ、大手企業の会長の癖に・・・ あの頃と変わんないまんまの悪戯っ子みたいに返されて なんだか、時間が元に戻ったような錯覚に陥る。 「こんなに解れてるし・・・  慣らさずに突っ込んでも大丈夫だよね?」 俺のこともう抱けないって言った奴が はち切れんばかりにいきり勃たせた自身で一気に貫いてきた。 「・・っ・・・真くんの中・・最高・・・・」 「・・あぁ・・・んっ・・・や・・・っ」 もう・・・言葉も返せない俺。 俺のカラダを熟知してる彼が イイところばっかりを擦りあげるように奥を突き 引き抜く動きで俺の蠢く内壁をカリで引っ掻くように引っ張り また、感じる場所を押しつぶすように奥へと進む。 それを次第にスピードをあげて繰り返され 俺は前に触れられることなく頂点に達してしまう。 「んんっ・・・あぁ・・イ、く・・・っ・・・・!」 イッた勢いで締め上げたのか 「・・・う・・っ・・・・」 色っぽい低音の呻き声が耳を掠めたかと思うと 最奥を数回激しく突き上げ ドクドクと中に熱いモノを吐き出された。 後ろだけで空イキしちまったせいか 俺のは何時までも蜜をダラダラと零し 視線をソコに向ければ物欲しげに揺れていて・・・ — ヤバイ、足りねぇ・・・ そう思った瞬間、突っ込まれたまま正常位にされ 「真くん・・・足りないんでしょ?」 ニヤリと彼は笑みを浮かべると 膝裏に腕を差し込みカラダを折りたたむように俺の上に圧し掛かり イッたばかりなのに硬さを保ってるモノをユルユルと動かし始めた。 結局、何度イかされたんだ? わかんねぇ・・・ 他の誰かに抱かれても 何時も得られなかった 絶対に手に入れられなかった 好きでたまらなかった笑顔 忘れられなかった甘い声 心地良い体温 そして・・・ カラダが憶えてる欲しかった快感を与えられ 俺はまだ・・・ 彼が好きなんだって再確認しながら 俺は押し寄る快感の波に呑まれ 意識を手放した。 ユラユラとカラダの奥深くに感じる心地よい痺れ。 幾度も吐き出した筈なのに まだ、疼くカラダ。 その疼きから開放されたくて 瞼の裏の愛しい人に腕を伸ばす。 もう一度、愛されたくて。 なのに・・・ 目覚めれば やっぱり俺はベッドに一人で 愛しくてたまらない人は傍にはいなくて シーツに残された微かな体温だけしか手にできなくて 如何してあの時、俺は棄てられたのか? 如何して今になって俺を抱いたのか> 何も訊けないまま また・・・ ひとり悲しみの淵に取り残された。

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