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第9話

目の前で談笑をする父さんと西野先生。 何時もと変わらぬ雰囲気・・・ そう・・・ 何時もと変わらない・・・ でも・・・ 俺は違和感がどうしても拭えなかった。 それは・・・ 父さんに? それとも・・・ 西野先生に? その答えは・・・ もう少し後に知ることになる。 如何することも出来ない状況になってから。 それも・・・ 双子の弟である脩から真実を告げられて。 「奏・・・どうしたの?」 咥えていたモノを口から離し尚兄が訊いてきた。 「何も・・・」 「嘘だ・・・何か考えてる」 何時もヘラヘラと笑って鈍感な尚兄なのに こう言う時だけは妙に勘が鋭くて嫌になる。 「尚兄・・・嫌じゃないのかな?と思って」 「ん?何が・・・?」 ヘッドボードに上半身を預けた腿の間にカラダを埋めた体勢で 俺を見上げる尚兄。 そして・・・ その視線は義足を外し本来ならある筈の膝から下の右足に移り 「奏は・・・女の子と付き合えないだろ?」 そう言って悲しそうに微笑む。 こんな足になったのは尚兄のせいじゃないのに・・・ 「これのこと?  これは尚兄のせいじゃないでしょう?」 言えば 「奏はもう忘れたの?  病院に運ばれて・・・  手術室から戻って、麻酔から目覚めた時・・・  足がない・・・足がなくなった・・・  これじゃ・・・歩けないし、走れない・・・  野球もできない・・・彼女だってもう、できない・・・  そう言って、泣いたんだよ・・・  俺、こんな頼んない兄貴だけど・・・  あの事故で母さんも亡くなって・・・  俺が奏を守んなきゃって・・・  奏がひとりでできないことは俺が助けなきゃって・・・」 尚兄はつぶらな瞳に涙を浮かべて返す。 だから俺は・・・ この心の中にあるドロリとした感情を隠して 尚兄の優しさに甘える。 兄弟なのに・・・ 決してこんな関係許されないのに・・・ それでも、止められなくて・・・ 尚兄が・・・ 欲しい・・・ 尚兄の全部・・・ 俺だけのモノにしたい・・・ 好きに・・・ 否・・・ そんな薄っぺらい感情なんかじゃない。 尚兄を独占したい・・・ そんな邪な感情を隠して・・・ 尚兄の優しさに漬け込む。 「じゃ・・・尚兄の中にいれさせて」 「うん・・・いいよ。  奏がそうしたいなら・・・」 目に涙を浮かべながら微笑んだ尚兄が 下着ごとズボンを脱ぎ私の上に跨ると 「ちょっと、待ってて・・・慣らすから」 そう言うと指をしゃぶり 唾液で濡れたその指で双丘の窪みに埋め込み蕾を解す。 一本だった指が二本、三本と増え 円を描くように動く指が尚兄の感じる場所に当るのか 時折、「んっ・・・」と吐く吐息が艶かしくて 俺のソレは待ちきれないとばかりに熱り勃ち蜜を零してしまう。 薄っすらと開かれた熱を持った尚兄の眼差しがソレを捉え 「奏・・いれる・・・ね・・・・・」 そう告げると 腹につきそうな程、勃ちあがったモノに指を沿え ゆっくりと俺自身を尚兄の中へと埋め込んで行く。 苦しいのか時折「・・・んん・・・っ」と 吐き出された吐息が俺を更に煽り 上下にユルユルと動く尚兄の腰の動きでは物足りなくなって 下から俺は突き上げてしまう。 それに感じた尚兄が硬くなった自分のモノに指を絡め扱く。 尚兄が白濁を俺の腹の上に勢いよく放つと同時に 俺も尚兄の中に邪な感情を秘めた白濁を吐き出した。 俺は卑怯な人間だ。 この・・・ 失ってしまった右足のせいにして 尚兄の自由を奪っている。 兄弟なのに・・・ こんな感情・・・ 本当は決して持ってはいけないのに。 頭でも理解してるのに・・・ 心でも理解してるのに・・・ けれど・・・ 尚兄が好き。 尚兄を俺だけのモノにしたい。 そんな子供みたいな そんな駄々っ子みたいな 穢れた邪な想いを手放せないでいる。 だから・・・ 脩が西野先生を好きだと言っても 俺は笑うしか出来なかった。 だって・・・ 俺はもっと醜くて決して許されない感情を 実の・・・ 血の繋がった兄に持っているのだから。 そして・・・ 大好きなその人の好意につけ込んで その穢れた邪な想いの丈を 大好きなその人の中に吐き出してるのだから。

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