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第10話

後ろにティッシュを挟んで まだ奥が疼いたままの身体を浴室まで運ぶ。 シャワーをあてようと足を広げて力を抜くと ドロリと冷たくなったモノが 内股をつうっと伝い落ちていった。 あぁ・・・ 和の想いが流れちゃった・・・ 僕は血の繋がった弟が大好きだ。 それは兄弟という枠を越えて 性的行為アリで愛し合ってしまうほどに・・・ 所謂・・・ 近親相姦・・・ってやつ。 もちろんそれは無理矢理奪ったってワケじゃなくて 奏も同じように僕を好きだし必要としてくれていた。 ・・・兄としての僕じゃなくて 愛する一人の人間として・・・ 事故で母親が亡くなって奏は右足を失った。 『・・・可哀想に・・・』 『まだ子供なのに・・・』 周囲からの同情の声は嫌でも耳に入ってきた。 でも・・・ 可哀想って何? じゃあ・・・ 奏の足が元通りになるように助けてくれるの? 『可哀想・・・』って言う言葉が一番、傷付くって・・・ 知ってるのかな・・・? 僕はあまり笑わなくなった奏の変わりに たくさん笑ってる。 本当は走りたいのに 走れなくて悔しいだろう奏の代わりに たくさん走ってる。 たった一度・・・ 僕の前で涙を見せたっきり それからピタリと泣かなくなった奏の代わりに たくさん泣いてる・・・ 僕が奏の出来ない事をしてあげるんだ。 僕は奏がしたくても出来なくなったことをするんだ。 ・・・って言うのは・・・ きれい事の言い訳・・・ そんなの・・・ もう・・・ ずっと前からわかってる。 本音は奏が僕なしでは生きて行けないように 優しい言葉を並べ立ててるだけ・・・ 奏の代わりだって言って、とことん甘えさせて ひとりでは立てないように仕向けてるだけなんだ。 そんなの・・・ もう・・・ ずっと前から知っててやってる。 いつだったか・・・ 脩がクラスの女子に告白されたって ちょっと自慢気に照れながら話をしてきた。 奏は良かったね・・・と、脩に微笑んだけど 僕と目があった瞬間・・・ 悲しげにパッと瞳を逸らした。 その日の夜 「・・・奏は女の子とはセックス出来ないから・・・  僕が相手になってあげるよ・・・  僕になら、傷跡見せるの嫌じゃないでしょ?  ・・・それじゃ、嫌・・・?」 無邪気なフリをして・・・ 欲なんかないよって顔をして・・・ この言葉の裏に何もないよって・・・ 兄として弟をを助けたいんだよって・・・ 汚い欲望を覆うように大義名分を振りかざして 僕を見つめたまま黙っている奏にそっと優しくキスをする。 軽く触れただけの唇を離すと奏は赤く頬を染めて 茶色のくりっとした瞳を揺らしながら 『・・・うん・・・」って頷いてくれた。 奏のモノを受け入れながら 「・・・好きだよ・・・」 ・・・と、呟けば 「俺も・・・好きだよ・・・」 そう言って、下から奥を突き上げてくる。 ・・・奏が右足を失って・・・ ・・・僕は奏を手に入れた・・・ 奏は・・・可哀想・・・じゃないよ・・・? だって僕はどこにも行けなくなった奏の傍に ずっと居られて嬉しいと感じているし 奏だって・・・ きっと・・・ 僕を必要としている。 凄く・・・ 幸せなんだ・・・ 奏だって凄く… 幸せな筈・・・ こんな醜い想いを気付かれたら・・・ 僕は・・・ 奏に嫌われる・・・? だから・・・ 奏の前では何にも分からないフリをして笑うんだ。 「尚兄は本当にバカだ・・・」 そう言って、呆れたように微笑んでくれる唇に口付けて 深いキスを重ねる・・・ 身体を重ねる度に大きくなっていく、好きっていう気持ちを もう、誤魔化すことは出来ないから・・・ 僕は・・・ 「尚兄は、もう要らない・・・」 ・・・って言われるまで ううん・・・ その言葉を絶対に言わせないように 奏を甘やかして どんな時もへらっと馬鹿みたいに優しく笑って・・・ 奏が僕から離れないように・・・ 繋ぎ止めるって決めたんだ。 あの日・・・ 初めて奏と身体を重ねた時から・・・

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