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再びの夫婦─檻─ 6
"籠の鳥"……?
何かの隠語だろうか。
よく口にしていた"遊び"と同じような。
すると、それを言われた使用人は、喉を鳴らした。
「……か、"籠の鳥"、ですか……」
「何か言いたいことでも?」
「そんな滅相もない!ただ私は、葵様に強い口調で言ったぐらいなもので……」
「その強い口調で言ったから、そこに行くことになるんだろう?」
「で、ですが……っ!」
「連れていけ」
冷たく言い放った兄につられて顔を上げてみると、兄の後ろにいた使用人二人が、逃げようとしていたその使用人をすぐさま手に取り、両脇から抱える形となり、抵抗して自身で歩こうとしないのを、無理やり引きずりながら座敷牢を出て行った。
「申し訳ありません……。お慈悲を……」と独り言のように言っているのを聞きながら。
その姿を目で追っていると、「葵」と呼ばれ、顔を上げると、ここに来て初めて微笑みにも似た顔を見せてきた。
が、どこか静かな怒りにも感じ、薄ら寒く思えた。
「葵が何でもかんでもお気に召さないから、中途半端な仕上がりになってるね。……また罪を重ねてしまったね」
「…………っ」
青ざめていく葵人の顔が面白く思えたのか、口元を歪ませた。
「抵抗するのは勝手だけど、葵はここから逃げられないのだから、言うことを聞かないといけないよ」
まるで小さな子供に言い聞かせるような口ぶりの兄に言われずとも、この周りの状況をひと目で見れば十分に分かっている。
きっと、あの時と同じ部屋だろうが、この大きな堅牢があるのとないのでは、ずいぶんと様変わりし、一層恐怖を植え付けていることには違いない。
小刻みに震え始めた葵人に、碧人はにんまりと口角を上げた。
「だからね、葵。──再び、夫 婦 にな ろ う」
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