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再びの夫婦─檻─14
「葵人ッ!!」
さすがにこんなにも連続して達せられていると、疲れが出てきて微睡んでくる。
そんな時に、悲鳴のような叫びが聞こえ、肩を震わせた。
その声の主は、先ほど猛獣だと表現した男性の方からだ。
その男性は、使用人の手から逃れ、檻に身体を押し付けて、必死な形相で葵人の名を何度も叫んでいた。
どうして、僕の名前を知っているの。
どう、して…………。
「葵。泣いているの……?」
「……え?」
ぐいっと顔を向けさせた兄が、葵人の顔を見ると、「やっぱり」と言って、頬に伝った涙の軌跡を、舌で来た道を戻るように、下から上へと辿った。
「もしかして、まだ彼のことを求めているの?」
求めているって、何を。
その問いに問いかけるが前に、兄と繋がれた部分が、じんわりと熱くなるのを感じた。
なんだろうか、この感覚は。初めてでよく分からないが、どうしてだろう、檻の外で今も尚、葵人の名を呼んでいる男性と──繋がりたいと、身体が求めているのだ。
この間でも、兄と繋がっているというのに、あの目の前にいる人とシたいと、身体が疼いて仕方ない。
分からない。どうして、そうなるのか、分からない。後にも先にも兄としか繋がったことがないはずなのに。
それは、本当に?
兄がここに訪れた時に言っていたじゃないか。兄の手から離れ、他の人に平気で股を開いていたって。
あの時は、葵人を陥れる嘘かと思っていた。だが、今はそうじゃないと思えてくる。
分からない。分からなくて、涙が出てくる。
「その様子だと、まだ彼のことを忘れてないわけだね。本当にどうしようもなく、ふしだらで、悪い子で、どれほど僕の手を煩わせるわけ……?」
「んひぅ……っ!」
勃ちっぱなしの真っ赤になっている葵人のを、碧人は鷲掴みした後、こう耳元で囁く。
「──西野寺碧衣の前で、僕達が仲良くしているところを見せつけようか」
西野寺碧衣。
その名を聞いて、全てを思い出した。
一度目の夫婦の儀式の時、兄を殴ってまで葵人を助けてくれようとしたこと、"発情期"の度に、精一杯慰めてくれようとしたこと、普段は気を遣って行為をしなくとも、葵人のことが好きでたまらなくて、優しい口付けをしようとするところ。
その一つ一つの記憶が葵人の頭の中で駆け巡っていく。
思い出してしまった。
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