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理不尽な現実 9 ※生理描写

「タンポンを入れていくよ」 肛門付近も丁寧に拭かれ、膝上でうつ伏せにさせられると、そのような声がけが聞こえ、付近を指で広げられた後、後孔に異物感を覚えた。 それは、碧人の熱ではない、無機質なプラスチック製の棒状の物。 久しぶりの感覚に思わず力が入ってしまっていると、「息を吸って」と言われる。 その言葉に促されるがままに息を吸うと、「上手」と褒められた。 どくん、と脈打つ。 これは多分、褒められて嬉しいと思っているのだ。 疑心暗鬼になりながらも結局は、昔から兄に優しくされてきたものだから、本能的にそのような言葉を掛けられたら、そうなってしまうようだ。 現金だ。 「終わったよ。これでひとまずは安心だね」 頭を撫でられ、にっこりと笑いかけられたのを見た瞬間、頬が熱くなるのを感じる。 「葵? もしかして、熱まで出てきた?」 「え? あ……、これは、その……っ」 「少し熱っぽいね。大変だ。温かくておかないと」 素早い手つきで新しい浴衣に着替えさせられると、腹部辺りに湯たんぽを置かれ、新しい敷き布団を掛けられる。 「今、氷枕を作ってくるからね。安静にしているんだよ」 「……ぁ……」 振り向きざまにそう言うのを、違うと言おうとしたものの、慌ただしく出て行く兄を見送ることとなってしまった。 「…………」 横向きとなっていた葵人は、徐々に感じる腹部の痛みを感じ、ぎゅうと湯たんぽを握りしめる。 その時だ。左薬指に違和感を覚えたのは。 何かが付けられているような感覚に、布団から何とか出し、見てみたが。 「…………!」 それは、指輪であった。 てっぺんに桜が立体的に象られ、その中心部にダイヤモンドらしい宝石が付けられる。 いつの間にこれが。 今の葵人が知らないというのなら、発情期の時に付けられたということなのか。 この指に付けられているということは、自分と兄は、そのような関係になったことを示されたということ。 「……は、はは……」 乾いた笑いが込み上げてきたのと同時に、しずくが頬を伝っていく。 あの時は嬉しかったかもしれないが、今は到底そのような気持ちが微塵もでない。 もう、いやだ。いやだよ。 そうは思っていても、自分には選択肢がない。 兄の言動を否定することも、この座敷牢から出ることも、そして、子を孕むことも。 全て従うしかないことを。 静かに泣き続け、そのうち兄が氷枕を持って、戻ってきて、「どうしたの?」と訊かれてもただ泣くことしか出来なかった。

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