32 / 122
理不尽な現実 15
肩で息をし、虚空を見つめていた時、無に近い表情の兄と目が合った。
「タンポンを入れたぐらいで、そんなにも反応してしまうだなんて、やらしい子……」
「……っ」
「でも、出ないことは分かったでしょう? もう、葵には必要がないってことなのかもね」
「ち、……っ」
違う、と即座に否定しようとしたが、睨まれ、噤むこととなった。
「食べる気はなさそうだから、葵の望み通り、薬を取ってくるから、何もせずに待っているんだよ」
碧人が部屋から去っていくのを、呆然と見送っていた。
否定したかった。
兄が射精 し切らせたから、今は射精 したくても、射精 せないのだ。
けど、あんな目をされたら何も言えなくなる。
兄のあのような目を見たことがなかった。
そういうのは本当に慣れていなく、特に兄の場合は、この後が恐ろしいから歯向かえもしない。
後になって、自分のことを想っていたからこその怒っていたならば、愛おしく思えるのに。
そう思うのは、兄がきっかけではない、違う"誰か"。
身動き出来ない頃からずっと考えていたこと。けど、何故かつい最近、また会ったような気さえもする。
それは、何故なのか。
と、そこで腹部を強く押されている感覚が起き、思考が途切れてしまう。
それと同時に来てしまう性欲。
生理のせいで普段はない性欲が強く出てしまい、より腹奥の疼きが治まらない。
否定、は出来そうにないのではないかと、脂汗を滲ませ、腹部を押さえながら思った。
一般男性に生理はなく、こうしてそれがきっかけに性欲が強くならない。
でも、でも……。
「ようやく、僕の言うことを聞いてくれた……?」
冷めない熱と自問自答する頭に意識をおいやっている時、いつの間にか戻ってきた碧人が顔を覗き込んできた。
手には、コップと薬を一錠持っていた。
今は兄の顔なんて見たくないと、顔を逸らすものの、一旦それらを置いた兄の手によって起こされ、顔を向かされる。
「にい……、……僕、自分で飲めるよ」
「だったら、この期間が終わったら、お仕置きを増やしてもいいってことだね」
「……ごめんなさい。飲むのを手伝って」
微笑み、よりも冷たい表情に近い碧人の圧と、さっきそう言われていたことを言った後に気づき、恐れながらも手伝ってもらうこととなった。
兄は畳に置いていた薬を自身の口に含み、その後水も含んだ。
まさか、と思ったが、その時には、驚いて半開きとなった口に流し込まれる。
「ん……っ、ふ……ん……」
ともだちにシェアしよう!