34 / 122
理不尽な現実 17
不快な感覚でいる葵人の口から碧人が離れていった。
二人の間には、名残惜しそうに銀の糸が引いている。
兄が離れてしまった寂しさで、自分から口付けようと顔を近づけた瞬間、また下からの責めが始まる。
「やっ! ん……! で、ない……っ! でない、からぁ……っ!」
そう口では言うけれども、兄の手で慰めて欲しいと思い、力の入らない腕でどうにか兄を自身の方へ引き寄せた。
「ん……っ! ん! ひぅ……!」
波が来た……っ! 快感の波が……っ!
嬉しくて、自ら腰を動かし、早く快感を得ようとしていたものの、葵人のは萎んでしまった。
射精 ない……射精 ない……。
悔しくなってきて、目に涙を浮かべながらも、再び腰を動かしていたが、兄の手が強く握ってきたことにより、強制的に止まることとなった。
「……何、勝手に腰を動かしているのかな……? 本当に葵は淫乱だね」
「んぅ……っ!」
「そんなにも射精したいのなら、させてあげようか」
「ひゃ、ぁ……っ!」
性急に手を動かされ、自分の意思ではどうにもならないぐらいに喘ぎまくり、何度も大きな波が訪れた。
けれども、さっきから何度も感じたように、一滴も出なく、中心部を痛めるだけだった。
ここで、「止めて」と言いたいところだが、それは兄に反抗したと見なされ、後々酷いことをされることを恐れ、ただ兄の気が済むまで扱かれ続けた。
どのぐらいそうしていただろうか。
気づけば仰向けとなり、浴衣が張り付くほどびっしょりと汗をかき、酸欠を起こしていた時、手が離れていった。
だいぶ前から、じんじんと痛む中心部に眉を潜めていると、碧人が額に張り付いた髪を掬うように撫でてきたことで、肩を震わせる。
「もう勃たないぐらい射精 せて、すっきりしたでしょう? 汗もかいたことだし、着替えないとね」
持ってくるから、と何度目かの部屋を出て行ったのを、今度は見送らず、虚空を見つめた。
何もすっきりしてない。
かえって、使えなくなってしまったのではないかと思うぐらい、痛めつけられてしまった。
必要以上にそうしてくるものだから、疲労と痛みが拭われることはなかった。
これも、"罰"ということ……?
そのうち考えるのも億劫に感じた葵人は、目を閉じた。
悲惨な現実を見たくも、受け入れたくもない罰から逃れるように。
ともだちにシェアしよう!