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理不尽な現実 19
身体が揺れている。
それが段々と誰かに揺すられているのだと、うっすらと覚醒していく頭で理解し、瞼を上げる。
「にい、さん……」
自分のすぐそばに、感情のない顔で見下ろす恐ろしい存在が目に移り、瞬時に身体を強ばらせた。
何かに対して機嫌が悪いことは明白だった。
「葵。僕がここに出る前、何て言ったか、覚えている?」
子どもに叱りつける親のような言い方に、真っ白になりかける頭で必死に考えた。
兄は用事があるから、大人しくと言っていた。そのことだろうけど……。
怖々とそう答えると、「それは覚えているんだ」と淡々と答えた。
「けど、それを覚えていて、これは何なのかな」
そう言って、兄が指を差した。
その時になって、ようやっと未だに掴んでいるモノに気づき、そして、血の気が引いた。
碧人は、弟が何かを言わずとも恐らく顔に出ていたのだろう、それで分かったようだ。表情が険しくなる。
「……葵って、そんなにも後先を考えずに軽はずみな行動をする子だっけ……?」
「……っ、ぁ……」
「……僕が一昨日扱いてあげたばっかだったよね? そんなにも物足りない……? それ以前にこの器官は、葵にとって必要のない部分だって言わなかった……?」
「……こ、これは……」
「じゃあ、分かった。女の子だと自覚させればいいんだ」
独り言のように呟き、納得する兄に困惑している葵人の両手を一つに纏め上げる。
骨が悲鳴を上げそうなぐらい強く掴まれるものだから小さく呻いたが、構わずに、檻に結びつけていた縄を解くと、それを葵人の両手首を縛り、背後にある柱に括り付ける。
きつく縛られた上に、両腕を無理やり引っ張られている状態であるため、もう既に痛みを覚えているが、それよりも、これから何をされるのだろうという、大きな不安が胸に渦巻いていた。
と、先ほど檻に結びつけていた縄があった辺りに置かれていた、錠付きの箱のような物の鍵を開け、何かを取り出した。
その中に何が仕舞われているのかは明白で、葵人はさらに不安を募らせた。
片手程度に収まる金属製のくの字に曲がった筒状の物。似たような形は、ここ最近付けられていたものだから、兄が手に持っている物はどのような用途て使うのかは、嫌でも想像出来てしまった。
だが、変わった形をしているのは一体。
浴衣の裾を捲られ、中心部に兄の指先が触れただけでも、ぴくりと反応を示す。
今は恐怖で怯えているはずなのに、期待をしてしまっている。
本当に自分はとんでもなく変態だ。
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