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理不尽な現実 23

程よい温かさが葵人の疲れ切った身体を優しく包み込んでくれている。 「ん……」 その温かさを感じた時、自分がいつの間にか意識が飛んでいたことを自覚し、ハッと飛び上がった。 「……っ」 その刹那、腰辺りに鋭い痛みが走り、やや前屈みとなった。 「葵。やっと起きたの」 葵人の真後ろから耳元に聞こえてきた、静かな夜に響くような声に、身体を強ばらせた。 「頬を叩いても、ちっとも起きやしないから、このまま起きないのかと肝を冷やしたよ」 良かったと、心の底から安堵するような声で、抱いていた腕を強く抱きしめる。 その時になって、兄が葵人のことを抱きしめていることが分かった。が、周りを見ると、座敷牢内ではなかった。 「……にい、…………ここは……?」 「まだ寝ぼけているのかな。ここは、お風呂場だよ。……ああ、そうか。入るのは、久しぶりだったかな?」 聞き捨てならない言葉を聞いた気がするが、訊くことはせず、代わりにこくりと頷いた。 「久しぶりに入る湯船は気持ちいいでしょう?」 「うん……」 「あぁ、そうだ。葵が起きない間に身体は洗っておいたから、ゆっくりと浸かってていいからね」 「あ、ありがとう……」 「それにしても、葵の身体は本当に女性のように柔らかくて、抱き心地がいいよね……」 「に、にいさ……っ」 ちゅ、と背中辺りにわざとらしいリップ音を立てて、碧人は口付けた。 急なことに驚いたが、そこから甘く痺れ、少しばかり自身のが反応し始める。 だが。 「……っ!」 ぴりりとした痛みがし、この時でも貞操帯が付けられたままなのだと自覚させられ、知らず知らずのうちに眉を潜めた。 けれども、振動している感じがしないことから、まだ良かったと思えてしまう。 「それと、裸になると、あちこちに(あい)を受けた証がはっきりと見えて……受け入れてくれたと嬉しくなるし、もっと(あかし)つけたくなるよ。もっとも、身体をこうしても、まだ葵には届かないみたいだけど」 左手を掬い上げられ、そのまま知らぬ間に嵌められていた指輪に口付けをする碧人に、歓喜と恐怖による寒気が同時にし、どういった気持ちでいればいいのか分からなくなった。 戸惑いを覚えている葵人はよそに、「さて」と空いている手を葵人の顎を取り、自身の方へ向けさせた。 「葵が起きたことだし、まだやり残していたお仕置きをやろうか」

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