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改淫な贈り物 11

「血が出てきている」と舐めてくる碧人のその発言により、今までの行ないは、全て両乳首にピアスを付けるためのことだったと知り、葵人にとってそれは、ちっとも嬉しくない贈り物だった。 今の今まで貼られていた、針付きの絆創膏よりも痛み、というよりも、身体が過剰に反応してしまうぐらいに、正直に言うと、愉悦の笑みが零れてしまっているのだ。 それを、兄のことならば、一生付けられたままだと思うと、平常ではいられなくなる。 最終的に兄が外すことになったあのピアスの方が、まだそこまで感じなかったのに。 きっとあれも葵人にとっては、大切な贈り物だったはず。けど、今は葵人の全ては、兄のもので。だから、どんなに葵人がそう思っていても、兄が気に入らなければ、その気持ちごと捨てなければならない。 「──けど、葵。僕がいいって言うまで、出しちゃダメだって言っていたはずだよね? 勝手に出したいけない子は、お仕置きだから」 兄の碧人がそう望むなら。 一旦柱から外され、その際に後ろ手であったのを、前に縛り直され、口枷も外される。 粗相をし、布団を汚してしまった箇所を気にせず、その上にへたりこんで、お仕置き(その時)を待っていた。 隣に立っていた兄が、布団に向かって何かをばら撒いているのを、視界の隅で見え、そろりと見やった。が、見た瞬間、目が見開いた。 捨てるようにばら撒いていたのは、同じような構図の写真だった。しかし、よく見ると、葵人と同じような、けれど、蝋燭の灯り程度の薄暗い牢の中で、天井からの縄で吊り下げられ、項垂れている男性の姿が映し出されていた。 その男性の顔やら、恐らく着ていたのであろう、すっかり服の意味を成してない布切れの合間から、殴打された跡が見るのもおぞましいぐらいに、はっきりと見えていた。 ところが、目を背けたくなるぐらいの痣となった顔を、痛ましそうな表情をしながらも、凝視してしまうことになる。 だって、だって。この顔は──。 「碧衣、くん……」 ──葵人。 すりガラスの向こう側にいた彼が、はっきりと見えた途端、こちらに不器用な笑みを見せた幻覚に、はらはらと涙を流していた。 「碧衣君……あお、い、くん……」 電池が切れかかっている玩具のように、その愛しくて忘れてはならなかった名を呼びながら、写真をくしゃりと掴んで項垂れた。 ここに連れ戻されてから、ずっと会えなかった、自分のことを一途に好きでいてくれた、不器用な人。 こうなる前まで、恐らくそばにいてくれたはず。 葵人のことが愛おしくてたまらないという気持ちが伝わるぐらいに、抱きしめてくれたり、唇を重ねたりしてくれたりもした。 それなのに、どうしてそばにいないの。 どうして、僕はここにいるの。

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