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改淫な贈り物 12

泣き止まない葵人の肩を強く掴まれたかと思うと、強引に後ろへと振り向かされる。 兄だ、と視界に入った刹那、唇を塞がれる。 目を見開いた直後、舌を入れてきた兄が葵人の舌を乱暴に絡め取る。 それがあまりにも苦しくて、手で押しのけようとしたが、呆気なく手を取られ、さらには下腹部辺りの合わせを捲られたかと思うと、割り開かれた足の間に手を入れ、後孔を指でまさぐってくる。 「ふっ、んーっ、んんっ!」 長い指が奥へと挿入(はい)り込み、一番イイところを突っつかれ、かと思えば、二本に増やし、ぐにぐにと強く押された瞬間、足をぴんと伸ばした。 達した。 くちゅり、と音を立てて、唇から離れたのと同時に後孔から指が抜かれ、布団の上でぐったりとした葵人は、潤んだ瞳でぼうっと、口から伝っていた銀の糸を舐め取る、艶かしい姿の碧人のことを見上げていた。 「ねぇ、葵。僕にとっての葵は、今、目の前にいる葵しかいないはずなんだ。葵が言う『あおいくん』って、一体どこの『あおいくん』なのかな……?」 口調は小さな子どもに優しかけるそのものであるはずなのに、ゾッとするほど冷めた表情を浮かべるという、あまりもの非対称に、喉がヒュっと鳴った。 「夫婦(めおと)の儀式の時もそうだけど、どうしてあのようなもののことを、心配してしまうのかな。葵がそんな行動をしたせいで、このような結果になってるの。僕が嫉妬深いと分かってて、わざとやってるの?」 「…………っ」 その時に会えていたんだ。 ところが、途中から発情期になってしまい、意識がない葵人には記憶にない出来事で、普段の葵人にとっては、身に覚えのない罪なのだ。だが、どんな葵人でも、兄からしてみれば同じで、赦されないこと。 そして、碧衣を見るのも無惨な姿にさせてしまった。 それは、自分のせいだから。 「あ、そうそう。ついでに、他の鳥籠行きになった二人の末路も、葵に関係あるから、言っておこうか」 「とり、かご……?」 「葵のことを怒って怖がらせた使用人は、暗がりの籠から一生出れなくしたし、葵のことを世話をしていたという、汚い言葉を吐いていた女中は、もうこの世にいないから、その二人に関しては、もう怯えなくてもいいんだよ」 「なんの、何のこと……」 「さて、その『あおいくん』とやらの始末はどうしようか。葵に手を出した罰を、葵が今のように、僕の名前よりも呼ぼうとした罰を、ずーっとしていたのだけど、さすがにずーっとしてきたから、人の顔を見るなり怯え、発狂してくるようになったから、もう捨ててもいいよね」

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