64 / 122
改淫な贈り物 21
唇から離し、目を開けようとした。──その時。
「……っ!?」
自身の首に手が回されたかと思うと、僅かに開いた口の隙間を割り開くかのように舌が入り込み、舌先を突っついてきたのだ。
驚きで目を開いていた葵人の目には、なんと、起きていた碧人が悪戯な笑みを浮かべて、舌を奥へと侵入させていった。
何度目か分からない激しい愛撫に、すっかり息を乱し、されるがままになっていた葵人の唇を惜しみなく吸い、離れていった。
さっきよりも赤らんだ頬をさせつつ、碧人のことを見つめていた。
すると、碧人は愛おしいものを見るような眼差しで見つめ返してきた。
「……葵がそのようなことをするの、久しぶりだね」
言われたことをすぐに理解出来ず、潤ませた瞳のまま、きょとんとしてしまった。
碧人は、くすりと笑って、
「葵の誕生日から僕の誕生日までの間、一緒に寝ていたことは憶えてる?」
「……うん、碧人さんと同じ歳にならなくなっちゃって、悲しくなっていたから、憶えてる」
「ふふ、そうだったね。あの時の葵は、今よりも甘えん坊で、とても世話を焼いたな……。その甘えん坊さんが自らキスをするのも、僕にもっと甘えたかったから……?」
首に回していた手を、頬を指先で触ってくる碧人の言葉に、 「そ、それもあるけど……」とおずおずと言った。
「……実の兄に、恋をしてしまっていたの」
かぁ……と、当てていなくても分かるぐらい、熱くなっているのを感じた。
ずっと自身の中で留めていたことを、ついに言ってしまった。
少なからずの後悔と恥ずかしさでいっぱいになっている葵人とは裏腹に、目を見開いていた碧人が、目尻を下げ、さらに笑みを深めた。
「そう、だったの。葵がそんな前から僕のことを……。ああ、嬉しい。とても嬉しいよ。きっと本能であり、そういう運命の兆しが、その時からあったんだね。ああ、本当に……葵の可愛らしい口からそのようなことが聞けて、本当に嬉しいよ」
「そんな……大袈裟だよ、にいさ──」
唇に人差し指が当てられる。
同時に、自身が無意識に言いかけた言葉に気づき、噤んだ。
「ごめんなさい、碧人さん……」
「あの頃のことを思い出した? それとも、まだ夫婦の自覚がない?」
「……ぁ、え……と……」
変わらずの優しい口調。けれども、数々の言い知れぬ恐怖に苛まれたせいで、これもまた碧人が機嫌を損ねる要因となってしまったのではないかと思い、しどろもどろになる。
口が回らない。でも、何かを言わないと、お仕置きが。
上手く発せてない言葉にさらに頭を混乱していき、動悸が酷くなってくる。
ともだちにシェアしよう!