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懐妊 5
口にしてしまったら、それが現実味が帯びてきて、現に嗚咽を漏らし、涙を流していた。
もう、嫌だ。本当はこんなこと言いたくないのに、碧人に当たってしまう。
それもこれも自分のお腹の中にいるもののせいだ。
碧人に手が掴まれていないことを好機に、葵人は再び、自身の腹めがけて手にかけようとするが前に、急に首が窮屈に感じた。
それは、いつの間にか手にしていた縄で首を締めつけられていたからだ。
これは、もしかすると。
首に結び、余った縄を両手首に繋ぎ、だが、相当短いらしく、首元に両手を、まるで乞うように手を組んだような格好をさせられながらも、泣き止んだ葵人は、次に来る淡い期待をして待っていた。
「僕、着替えてくるから、大人しく横になっているんだよ。そしたら、一番に愛してあげる」
「うん、待ってる……」
横にしてくれ、布団を掛けてくれた碧人に、頬に口付けると、碧人もお返しに葵人の頬にもしてくれ、それでまた機嫌良くなってきた葵人は、去っていく彼の後ろ姿を、見えなくなるまで見送っていた。
また部屋に来てくれた時は、お腹の子達に手をかけようとした罰として、痛みが快感に変わる"お仕置き"をしてくれると思うと、口の中に広がる不快な感覚が気にならなくなっていき、締まらないほどの頬が緩みきっていた。
「早く来ないかな、碧人さん……」
熱いキスをしてくれたおかげで、後ろはいい具合に濡れ、いつでも碧人を受け入れる準備は出来ていた。
さらに痛いお仕置きをしてもらおうと、碧人の言うことを聞けない悪い子にでもなろうとしたが、いかんせん両手が首元近くにあるという、今までよりも不自由な格好にさせられているせいで、行動が制限され、さらに、興奮したせいで、さっきよりも熱が上がったような気もして、一気に身体の怠さを覚えた。
「寂しいよ……はやく……」
気持ちも身体も早く碧人に、慰めて欲しい。
今の自分では悪さをする意味でも、自らの手で、下を慰めることも出来ないから。
「葵、お待たせ」
障子が、次に座敷牢の扉が開く音が聞こえたのと同時に、優しい声が静かに響き、意識が遠のきかけた葵人の耳に届き、声を上げた。
「碧人さん……」
そばに来て、さっきと同じように頬にキスをしてくれた後、額に手を乗せてきた。
ひんやりとする手が気持ちいい……。
「……さっきよりも、熱が上がっているね……だから、言ったでしょう? 興奮したら、身体に良くないって」
「……ごめんなさい……」
碧人さんの言うことを聞けなかったから、お仕置きしてくれる?
上半身を抱き起こし、「口の中不快でしょ。一旦ゆすごうか」と水のペットボトルの口を口元に寄せてくれたことに嬉しくなりつつも、再び起こった期待が、大きくなっていくのを感じた。
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