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育み 5

6-5 「母乳が垂れていたから舐めてあげたのだけど、次から次へと出てくるものだから、舐め終わらなくて……。それなのに、葵は何故そんなにも蕩けた顔をしているの?」 「そ、そんな、の……、嘘、じゃ……」 「嘘なわけがないよ。今だって垂れてきているし、搾乳器が必要かな。……下もこんなにも射精()しちゃっているもんね……?」 「や……ぁっ!」 「葵には必要ないのに」そう言って、不意に、碧人に触られて短い悲鳴を上げたのも束の間、そのせいで二人がほぼ同時に泣きながら起きてしまったのだ。 「新……んっ、真……っ、ねぇ、やめて……っ、そんな、とこっ! 吸わないで……っ!」 「……こんなにもだらしなく垂らしているのに、吸わないわけにはいかないでしょう?」 「うっ、ふ……っ、今、じゃなくて、いいから! あやさせて……!」 二度目の波に呑まれそうになるのを、碧人の頭を押しのけることでどうにか回避する。 が、身体を起こした夫の顔を見た時、背筋が凍りついた。 してはならなかったと、後から後から後悔が押し寄せてくるが、今でも泣いている我が子達のことを放っておけるはずがなく、振り切って、「新をお願い」と手渡した。 「新、ママのせいでびっくりしちゃったね」 いつもの穏やかな調子で、泣きじゃくる新を慰めていた。 元はと言えば、そっちのせいでしょと言いたくなる文句を堪え、真を抱き上げて、あやしていた。 「ごめんなさい、真。とっても気持ちよく寝ていたのに、起こしてしまって」 揺らしながら背中辺りをトントンと叩いてやると、徐々に落ち着いてきて、こちらのことを見つめていた。 その表情の愛おしくさもあって安堵の笑みを返した。 と、不意に晒されたままの胸の方へ向いたかと思うと、乳房を口に含んだのだ。 「ん……っ」 散々弄られたのもあって、しかし、さっきのこともあるため、どうにか驚かせないようにしたためか、真はびっくりせず、そのまま口に含んでいた。 「またお腹が空いたの……? ただ甘えているだけ? 真、どうしたのです?」 小さく笑って、小さな頭を撫でていた。 そんな二人を、すぐそばでこの場にそぐわない表情をしている者がいるなど、気づきもせず。

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