97 / 122
育み 9
「新。オムツを替えましょう」
「やっ!」
「……真は、お着替えもしましょうね」
「やっ!」
むちむちとした両手を交差させて、バツを作りながら、ぶんぶんと横に振った新と、まだ浴衣のままでいる真は、葵人の元から蜘蛛の子を散らすようにてってってっと、走り去ってしまった。
「……あぁ、ダメだ。今日も素直にさせてくれない……」
新のオムツを持ったまま項垂れてしまった。
そんな葵人の肩に手を置く者がいた。
「仕方ないよ。あのぐらいの年齢になると、イヤイヤ期があるみたいだし」
「碧人さん……」
にっこりとした顔を向ける最愛の人に、ホッとする、というよりも。
「……分かっているなら、碧人さんも二人をどうにかしてよ」
「どうにもならないと思うよ。二人が素直にやらせてくれるまで待つか、それとも、葵がお手本を見せるとかね……?」
そう言って、反対側の腰に宛てがわれたかと思うと、もう片方の手を葵人の浴衣の裾を捲ろうとする。
その手つきがやらしく、瞬時に頬が赤くなる。
「…お、お手本って、何をするつもり?」
「何って、葵が新にしようとしていたことだよ?」
「……!」
なんてことのないというような口調で、晒された太もも辺りをなぞるように触っていき、そのまま反応を見せる秘部にまで行きそうなところを、手で制した。
「何しているの、葵?」
「何はこっちのセリフ…! 子供達がいる前で何をしようとしているの!」
前も子供達が寝ている時に、声を我慢出来ないことをされた。
あの時は、寝ているから良かった、とも言えないが、今は二人が起きている時だ。教育上、よろしくない。
構わずにやろうとしているらしい碧人の手を、どうにかこうにか引き止める。
ところが、碧人はこう言うのだ。
「今、新と真は遊んでしまっていて、言っても仕方ないから、葵を着替えさせようと思っただけだよ」
「へ……?」
碧人の目線の先を、ぽかんとした表情で見てみると、たしかに二人は、葵人らから離れた場所で、ぴょんぴょん跳ね合って、きゃっきゃしていた。
微笑ましい光景、と和みたいところだが、二人してオムツは不愉快ではないのだろうか、と思っていた矢先、帯を解こうとするところを、こちらに意識を向けた。
「碧人さん! 自分で着替えられるからいいよ!」
「僕がいない時でも、二人の子育てしてくれていて、自分のことに気が回らないでしょう? このぐらいのことをさせてよ」
「大丈夫だって!」
「溢れている母乳はどうにか出来ないでしょ?」
ともだちにシェアしよう!