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育み 11 ※搾乳器
それは、今のハンドルを動かし、最初は痛みを覚えたものの、母乳がちょろちょろ出てきた時のように。
「あ、お…っ……ん、ふ…っ」
「やっぱり、浴衣に染み込むほどだから、出がすごいね。……ほら、もう哺乳瓶が満タンになってきてる」
「やめ……っ!」
漏れそうな喘ぎ声も虚しく、乳首から搾乳器を離し、溜まった哺乳瓶を見せつけてくる。
「……こんなにも出てしまうだなんて。今、だらしなく漏らしている、葵には必要性のない、愛液みたいだね」
「……っ!!」
全身が火照ったかのように、熱い。
いつも二人にあげている栄養源なのに、それすら碧人の言葉で卑猥に見えてしまうだなんて。
「右の方もやってしまおうか。……ピアスを汚してしまうほどに溢れているのは、期待しているの……?」
「…ち、ちが……あ、んぅ!」
わざとなのか、ピアスを掴み、激しく左右に揺すり、たまらなく声を上げてしまう。
「声を上げちゃ、だめでしょ……?」
「だっ、てぇ……」
「ほら、新と真がこっちに来ちゃったじゃないか」
「え……?」
潤んだ瞳を向けると、「なー?」とほぼ同時に声を上げて、こちらに走ってきた。
慌てて浴衣を整え、つぶらな瞳で見てくる二人に「なんでもありませんからね」と小さな頭をそれぞれ撫でてあげた。
「うんち!」
「え?」
「あーた、くちゃい! おむちゅ!」
「あ、あぁ! はいはい、今やってあげますからね」
やっとやらせてくれる気になったかと、ホッとしつつ、双子用の布団を敷いてその上に寝かせ、替えていると、「まこ、も!」と真がぐいぐいと引っ張ってきた。
「待っててくださいね。今やってあげますから」
「やっ!」
「待ってって……」
「いいよ。真は僕がやるから。葵は新のことを構ってあげて」
おいでと、両手を広げる碧人を見て、ついさっきのことを思い出してしまい、頬を赤らめてしまった。
その様子に、目敏く見つけた碧人が、嬉しそうに抱きついてくる真を抱きしめながら、「どうしたの。そんなにも僕のことが好き?」なんて訊いてくるのだ。
分かっているくせに。
そう思いながらも、その問いかけに答えようとするが前に、新が泣き出してしまったがために、慌ててオムツ替えに取りかかった。
「やぁああああっ!!」
「こら、暴れないでって!」
「あぁああああ!!」
「真もいきなりどうしたの」
あちらこちらで、泣き叫ぶ二人にあくせく両親がどうにかしながらも着替えさせた時には、二人は上機嫌となり、遊び出すのを、特に葵人はぐったりとしてしまった。
そんな葵人を抱き上げ、労いの言葉をかけて、瞼にキスをしたなど意識半ばの葵人には、夢の中の出来事のようだったのであった。
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