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耐えきれない愛惜、檻猿籠鳥の矢先に 1
「かーさま!」
「かーさま!」
「ふふ、どうされました?」
二人でごっご遊びをしているのを、遠くから、前よりかは大きく、けれども、葵人にとってはまだまだ可愛らしい小さな背中を微笑んだ顔で見つめていた時、ほぼ同時に振り返った二人が、こちらに駆け出してきて、両手を広げた葵人の胸に飛び込んだ。
腕の中で可愛らしい声を上げる二人につられて、葵人も思わず声に出して笑った。
すると、急にずいっと、小さな手を上げた二人に目をまん丸とさせながらも、手のひらにあった物を見て笑みを見せた。
「かーさまにあげるー!」
「じょうずにできたー!」
意気揚々と言う二人が見せてきたのは、チューリップらしい、水色とピンクの折り紙。
それは、ついこないだ教えたばかりものであったことに気づき、そんなに成長したのかと嬉しくて、目が滲んでいく。
「ありがとう、ございます……っ」
一人ずつ受け取り、そっとそれを胸に抱く。
まだきちんと上手に折られてない折り紙。それでも、葵人から見れば、二人からの初めての贈り物でもあったことから、素敵な宝物になった。
「かーさま、ないてる?」
「かーさま、いいこいいこっ!」
新は首を傾げ、真はその小さな手を目一杯上げて、葵人の頭を撫でてくる。
「ごめん、なさい……。とても、嬉しくて。お父さまに、からかわれてしまいますね……っ」
目尻に溜まった涙を指先で拭い取り、並んだ小さな頭をそれぞれ撫でてやると、鼻歌を歌うように、その場をぴょんぴょんして喜んでいた。
あれからずっと、この二人だけでもこの檻から出せないかと色々と考えてみるものの、やはり、そういったことも想定済みらしく、知らぬ間に取り付けられていたカメラのせいで、檻に何か細工をしたとしてもすぐに暴かれてしまうため、何かをしようにも出来なかった。
碧人がいない代わりの監視の使用人が見かけないと思ったら。物心が着く前から知っている間柄では、何もかも勘づかれてしまう。
一体、どうしたら。
「かーさま、どうしたの?」
「おなか、いたいいたい?」
二人の言葉でハッとする。
深く考え込んでいたらしい、二人が心配そうに顔を覗き込んでくるのを、「いいえ。大丈夫ですよ。さあ、遊んでらっしゃい」とそれぞれの顔を見ながら言うと、二人は首を横に振った。
「「かーさまとあそびたいっ!」」
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