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耐えきれない哀惜、檻猿籠鳥の矢先に 2
「…………え?」
声を揃えて言ったことに、目をぱちくりさせる。
「あそぼー!」
「いこー!」
「え、ちょ、待って」
撫でていた手を、ぐいぐいと、どこからそのような力が出てくるのか、それぞれに強く引っ張られるものだから、促されるがままに双子の後を、前屈みになりながら着いていく。
戸惑いを覚えながらも、二人に誘われた嬉しさが勝り、顔を綻ばせた。
「──今日は何をして遊んでいるのかな?」
扉が開かれる音と共に、聞き慣れた声で言葉を掛けられたのを機に、双子は立ち止まり、葵人はふと顔を上げた。
しっかりと閉め、こちらにいつもと変わらない笑みをくれる、子ども達と同じぐらい愛しい人。
けれども、何故か、顔が引きつる。
それは、双子も同じらしく、怯えた様子でこちらに寄ってくるのを、膝をついた葵人は抱き寄せる。
「どうしたの。みんなして怖い顔をして。僕があまりにも久しぶりに来たから、顔を忘れちゃった?」
「そ、そういうわけでは、ないのだけど……」
「とーさま、こわい……」
「とーさま、やだっ!」
「新、真、そのように言っては、なりませんよ……」
ヒクヒクと、しゃっくり声を上げながら泣き出す二人をたしなめようとしたが、自分でも驚くぐらいに震えていた。
何に、怯えているのか。
「お母さまの言う通り、そんなことを言われたら、お父さま、悲しくなっちゃうな」
そう言いながら、一歩、一歩こちらにやって来る碧人に、「やだー」「やー!」とぽろぽろと涙を流す二人を、「大丈夫。大丈夫ですから」と慰め、さらにぎゅっと抱きしめる。
「ほら、怖くない──」
パンッ!
目の前に来て、しゃがんだ碧人が双子を慰めようと手を伸ばした時、葵人はその手を叩いた。
まさか葵人が、そのようなことをするとは思わなかった様子の碧人が、驚きで目を開いてくのを、スローモーションのように見ていた。
その様子に内心、自分でもそんな行動をするとは思わなく、自分自身に驚いていたが、それよりも。
碧人が一瞬にして、仮面を被ったかのような冷たい表情へと変貌する。
「……せっかく穏便に済ませようかと思っていたのに……」
大げさに深いため息を吐く彼の言葉に、背筋を凍らせる。
まずい、これは。
「ご、ごめん、なさ……」
「葵。前にも言ったけど、謝るのなら最初からやらないで欲しいと言ったはずだし、葵には、償っても償いきれない罪があるでしょう……?」
「あ、……ぁ……」
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