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耐えきれない哀惜、檻猿籠鳥の矢先に 3
恐怖が一気に押し寄せ、声になってない声を上げた。
そんな葵人とは反対に、碧人はこれ以上にないぐらいの満面の笑みを見せた。
「そんな罪深い葵は、お仕置きだよ」
「いや……っ!」
短い悲鳴を上げる葵人をよそに、碧人が立ち上がった瞬間、音もなく入ってきたらしい使用人二人が目の前に来ると、それぞれ泣きじゃくる双子に手を伸ばしてきた。
瞬時に察した葵人は、さらに痛いぐらいに自身の方へ抱き寄せる。
──が。
「…………あ」
緩んだ紐を解くかのように、呆気なく使用人らに双子を取られてしまう。
すぐさま、「かーさまっ!」と泣き叫ぶ我が子達の、一杯一杯の小さな手を取ろうと手を伸ばすが、背後から強く抱き込まれたことにより、あと一歩にも届かず、二人は葵人から遠ざかっていく。
「いやっ! いやぁっ! 新っ! 真っ!」
「……もう、無駄なことはしない方がいいんじゃない……?」
「う……っ!」
耳元に囁き、口の中に指を突っ込まれ、舌を取られる。
上手く喋れない。そうしている間にも、自分のことを助けを求めている、今までに聞いたことのない二人の泣き叫ぶ声がしているのに。
自分があやかさないと。新と真は、母である自分のことか一番に好きだから、あのような人達に触られたくないはずだ。
それなのに、碧人は離してくれなく、舌を愛撫される。
そうしているうちに、二人の姿が見えなく、声が遠ざかっていった時、口が解放されたのと同時に、力を失ったかのように地に伏せる。
「……な、……な……で……なん、で……」
息を切らし、途切れ途切れながらも、ようやくといったように言葉を紡ぐ。
すると、そばに正座をした碧人は頭を愛おしげに撫でてくる。
「それが、葵の罪だから」
「でも……、あの二人を、育てるのは……母である……っ、僕の務めじゃないの……っ!」
「もう、その務めをしなくていいからだよ」
「どうして……っ! そんなわけがないよ……っ! あの子達が独り立ちするまで、するものじゃないの……っ!」
あの二人はこれから、どんどん色んな言葉を覚えていって、幼稚園に入って、友達が出来て、小学校からは色んな勉強をしていって。それで色んなことに興味を持っていく、その成長をそばで見守り続ける。
その務めを、もうしなくていいってどういうことなの。
そんなの、あんまりすぎる。
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