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耐えきれない哀惜、檻猿籠鳥の矢先に 4
「僕の、楽しみを……唯一の生きがいを奪わないでよ……っ!」
部屋に響かんばかりの大声を上げた葵人は、堰を切ったように咽び泣く。
二人が自分の中にいた時には、微塵も思わなかった子への愛情。
こんな溢れるばかり愛情が芽生えてしまうのなら、やっぱり手にかければ良かった。
きっと、さっき泣いている姿で見るのが最後であろう、二人からもらった大切な贈り物を、両手で添え、胸に抱いた。
新。真。
「…………で、葵の話はそれで終わり?」
抑揚のない、愛したくもない人の声が頭上から降ってくる。
そんなわけがない。言いたいことはたくさんある。あの二人を取り返してくれるまで、ずっと。
その言葉が感情に変わり、声にならない泣き叫びを上げ続ける葵人の両手を縛った。
え、と驚き、泣き止んだのも束の間、目元を白い布で覆われる。
「な、何をしてるの……」
「何って、これからここは真の部屋になるから、葵には別の部屋に行ってもらおうと思って」
「でも、ここまでする必要は、ないんじゃ……」
「お風呂の時と同じだよ。葵が隙を見て逃げ出さないように」
「僕、逃げたりなんかしないよ。だって……」
「さぁ、どうだろう。前に逃げ出した人が言う台詞じゃないよね」
何も言い返せなかった。
それからずっと罪を重ねることとなった原因のを、弁明する余地もない。
けれど、今は、この家に大切にしたい小さな宝物がいるのだから、逃げようだなんでこれぽっちも思わない。
だが、浅はかな考えでしてしまったことには変わらなく、赦してくれるわけがない。
「あの碧人さん……。真がこの部屋にいることになるのなら、僕もここで一緒には……」
「僕がそんなこと、赦すわけがないよね?」
「……ぁ、……ふぅ、んっ」
冷たく言い放った碧人に仰向けにされると、足を割り開かれ、不必要な中心部を突如まさぐられ、淫らな声が出てしまった。
視界を覆われているがために、より感覚が研ぎ澄まされるらしい、腰辺りに取り付けていたフックから外し、ストッキングから外され、晒された中心部をこれみよがしに碧人に、鈴口、首と弄ばれ、我慢ならない声を上げ、身悶える。
碧人の手によって、すっかり息の上がった葵人の唇に、不意に唇で触れられ、軽く達してしまった。
「あーぁ……着物を汚しちゃったね……本当に、悪い子……」
「んっ、ひぅっ!」
敏感になった筋を指先で触られ、酷く反応してしまう葵人に、さっきとは打って変わって、嬉しさを混じえた碧人がこう言った。
「悪い子の葵。鳥籠へ行こうか」
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