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耐えきれない哀惜、檻猿籠鳥の矢先に 16

手が離れ、碧人が袂を探っていると、白い布のような物を取り出した。 それを広げると、葵人の目元を覆う。 そして後頭部に結びつけるが、目の周りは絹のような肌触りの良い布が、軽く覆われているぐらいで、唯一の明かり窓から吹く風で、ゆらゆらと揺れる。 「この目隠しは、儀式が終わるまで外さないように」 「……あ……」 碧人の言ったことにすぐに返事をせずにいると、「本当に悪い子……。わざとなの?」と再び付けられていた乳首ピアスに繋げていた鎖を引っ張る。 「ああっ!」 「淫らな声を上げるのは、すぐなのにね」 「んひぅっ!」 緩めては、引っ張る行動を繰り返され、ビクビクっと身体が跳ねる。 気持ちいい……。敏感な部分に痛いぐらい強い刺激を与えられて、気持ちいい。もっとして欲しい。 頬を染め、だらしく開いてしまった口から、熱っぽい息を吐いて、誘っている風を装っていた葵人であったが、その思いとは裏腹に、鎖から手が離れてしまった。 「……や、……んっ」 「いつまでもこうしている場合じゃないね。葵には、やってもらわないといけないのだから」 立ち上がった碧人がすぐに、何かを持っているらしい、布の擦れたような音がした後、葵人に羽織らせる。 それは、目隠しと同じように絹のような肌触りのよい浴衣らしいもの。 久々の着るものと、敏感となった肌に触れたものだから、ビクッと身体が大きく跳ねる。 普段であればこれで達してしまっている。 しかし、連日抱かれているせいもあり、一滴も出なかった。 少し息の乱れた呼吸を整えていると、蝶番の甲高い声が聞こえる。 碧人が檻の外に出ていったという合図。 かと言って、今の葵人は特に反応を示すことはなく、遠ざかっていく足音さえも耳に傾けることもなく、僅かにも動かずにいた。 それから、呼吸が安定してきた頃だろうか、再び足音が近づいてきた。 けれども、さっきとは違う、二重にも聞こえる足音。 それでもなお何とも思ってない葵人がいる檻の中へと、扉が開かれる音が聞こえた。 葵人の目の前にいるらしい、布の隙間から、碧人らしい足とそれともう一つ、一回り小さい足がこちらに向けられていた。子どものようだ。 「……お、お父さま……っ」 その子どもがどことなく戸惑っているらしい、まだ幼さを残す声で碧人に助けを求めているようだった。 碧人のことを父と呼ぶ子ども。

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