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愛撫 5

彼の身体が激しく痙攣した。  そして、一瞬強張り、次の瞬間全身がゆるんだ。  その後、口の中の舌さえ緩んで、彼がイったことがわかった。  まだ彼は幼くて射精はできない。  でも、イくことは出来るのだ。  やっと手を止めてやり、口から舌を引き抜いた。  「ふえっ、ふうぅ、ふえっ」  彼は嗚咽していた。  真っ白な身体を丸くして泣いていた。  可愛かった。  愛しかった。  自分の手でイかせられたのが嬉しかった。  丸まった身体を抱きしめて、涙を舐めとる。  「可愛い、好き」  少年は囁く。  「シて?」  自分のを扱いて欲しかった。  いつもみたいに。  そして飲んで欲しかった。    いつもみたいに。  でも、彼は自分のモノへ導こうとする少年の手を振り払ったのだ。  「やだ!」  彼は拒絶した。  よく考えたら、望みもしないのに、生まれて初めてイかされたのだ。  怖かっただろうし、だから、もう性行為をしたくない気持ちも分かるはずだった。  でも、少年は彼に拒否されることに耐えられなかった。  頭に来てしまった。  こんなに好きなのに、僕を拒否するなんて。  自分勝手な怒りだった。  彼の上に馬乗りになった。  そして顎を掴んで無理やりに口を開けさせた。  そして、そこに自分のモノを押し込んだ。  マザーが男にこれをやられてるのを見たことは何度となくあった。  マザーは苦しそうで、苦痛の声をあげていて・・・でも、マザーはそんな行為でも達していた。  だから・・・本当はそんな苦しくないんじゃないかな、などと思ったのだ。   グフッ   グエッ  彼は苦しげな声をあげた。  それに興奮する少年がいた。  それに胸を痛める少年がいた。  どちらも自分であることに少年は怯えた。  でも、彼が自分を振り払ったその手の残像が、少年をその先に進ませた。  少年は細い彼の喉の奥を犯した。  彼の中にいることがたまらなく・・・嬉しかった。  涙を流し、苦痛の呻き声をあげる彼の頭を押さえつけ、その喉の奥を味わいながら、少年は夢中になっていた。  熱い。    彼の中だ。  彼の中だ。  「好き。好き。・・・大好き」  夢見心地に囁く声は苦痛に耐える彼には聞こえない。  愛しかった。   止められなかった。  でもその行為は、彼からしてみたら、信じていた少年に酷いことをされているだけだった。  そういった行為を見てきた少年と、性的なものを拒否し続けてきた彼とは受け取り方は大きく異なった。  まだ快楽のある行為ならさっきまでの行為ならともかく、これは全く異なるものだった。  彼は絶望しながら苦しみに耐え、少年は彼の中にいることに浮かれていた。  殺しきれない声を零して少年がうっとりとそこに放った時、彼は絶望を感じていた。  少年は声を思わずあげて果ててしまった。  自分がした事に気付いて、慌ててたが、もう遅い。  彼の口から、引き抜いた。  彼がえづく。  苦しげに。  それでも飲んでしまったのは、毎晩そうしていたからだろう。  あまりにも苦しそうだから、少年は焦る。  「・・・ゴメン。本当にゴメン」   ベッドにうずくまり苦しむ彼の背中を撫でようとした。  少しでも助けてあげたくて。  パンッ  衝撃が頬に走った。  何がおこったのかわからなかった。  自分が彼に平手打ちされたのだと気付くのに時間がかかった。  男の子達の集団だし、綺麗な見かけに反して、少年達は気が荒い。  「タイプ【クィーン】は問題ばかり引き起こす、でも、ほかのどのタイプよりも・・・客がハマるからな・・・」  少年が喧嘩で頭を打った時、呼ばれた組織のドクターはそう言っていた。  少年達は自分達がタイプ「クィーン」と呼ばれる商品であることを知っている。  その性格は激しく、傲慢で、残酷で淫乱で情熱的。   全ての人間を狂わすセックスドールだ。  管理が一番難しいらしい。  その激しい性格から、小さな頃は殴り合いなど頻繁にあった。  でも、彼だけは殴られても殴り返したりしなかったのに・・・。  自分達と同じ遺伝子でできているとは思えないほど、彼はおとなしく優しかった。  むしろ、彼を泣かしたり、殴ったヤツを許さなかったのは少年だったのに。  彼が自分を平手打ちしたことが少年には信じられなかった。  呆然と彼を見つめる。  そして気付く。   彼の目の痛みに。  自分がしてはいけないことをしてしまったのだということ。  

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