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愛撫 8

 やはりソイツはド淫乱だった。    マザーと同じ。   そして、少年と同じ。  苦しんだはずなのに、射精していた。  「酷いなぁ・・・」  咳き込みながらも、ケロリとしてる。  「でも・・・良かった。喉はもうごめんだけど。・・・奥ってあんなになるんだ・・・知らなかった」  ソイツはうっとりと言う。  どうでもいい。  出したら少年は醒めてしまった。  さっさと服を整え少年は出て行こうとする。  今日こそ彼と仲直りするんだ。  この何日もしっかりセックスした。  だから、大丈夫。  夜抱きしめて寝ても彼を襲ったりしない。  大丈夫。  もう苦しめたりしない。  あの身体に触れたい。  セックスできなくてもいいから。  抱きしめて眠るだけでいいから。  前みたいに。   「またしようね。・・・あの子じゃつまらないんでしょ。ここんとこ、あの子以外としだしたの。・・・あんな子じゃね」  ソイツは笑いながら服を着た。  少年は立ち止まる。  「あの子だけだよ、同じ遺伝子でできているとは思えない。出来は悪いし、セックスは嫌がる。ちょっと触ったら泣くし、つまんないよね、だから君も、嫌になったん・・・」  そこまで言いかけて、ソイツは何も言えなくなる。  少年に喉を締められていたからだ。  「・・・触ったってどういうこと?」  感情のない声で問い詰める  でも、両手で強く締められ、答えられるはずがない。  ソイツ目が見開かれ、目玉が飛び出しそうになる。  「触ったんだ?」  全く感情のない声で少年は囁き、その白い首を絞めあげていった。  許せなかった。  僕以外が触っただと?  喉に突っ込むのとは違って、ちゃんと絞めたら声なんかしないんだな、と少年は思った。  限界まで空気を求め開かれた口。飛び出しそうな目玉。垂れ下がる舌。  こっちのがクる顔じゃないか・・・少年は冷静に思う。  締めるのを止めたのは、ちゃんと答えを聞いてないからだ。  手を緩めてやれば、必死で呼吸をし、肩を上下させ、むせるソイツに、少年はまた尋ねた。  「触ったって・・・どういうこと?言わないと本当に殺す」  ソイツは怯えていた。  殺されかかったのだから当然だ。  「・・・あの子が君を独占してるから・・・僕らと何がちがうのかって・・・君がマザーの補習を受けている時とかに・・・みんなで抑えつけて、服を脱がせてちょっと遊んだだけ・・・でも挿れたりはしてない。触っただけ」  ソイツの言葉に、少年はショックを受けた。  少年の知らないところで、彼はそんな目に合っていたのだ。    「君も僕を人形として」  あの夜の彼の言葉が刺さる。  少年は今その言葉に胸をえぐられる。  「・・・ちょっとふざけただけ。あんなに泣かれたらさめるし。手足押さえつけて、ちょっと触って、舐めただけ」  咳き込みながらソイツは言った。  少年は黙って、またソイツの喉に触れた。  そこは赤い跡になっている。  また締められるのかとソイツは怯える。  「机に手をつけ」  少年は冷たく言った。  絞めていたら勃起していた。  コイツが死ぬかもしれないと思ったら、すごく楽しくなって、そこが勃った。   「・・・ええっ、なんで勃ってるの・・・」  ソイツは怯える。  人の首を絞めて、少年が勃起したから。  無理やりその身体を机に押さえつけた。  ソイツのまだ服を着ていない下半身を腰をつかんで引き寄せた。  押し入れた。   「ハアッ」  ソイツが喘いだ。  尻が揺れる。  求めるように。  殺されかけた相手でも、感じる。  誰が相手でも乱れる。  少年は嫌悪した。  ソイツに。  そして、ソイツに興奮している、  自分に。  僕達は汚い。  欲望だけの生き物だ。  白い喉に手をかけ、後ろからその首を締めながら、腰を叩きつける。   絞めたら締まった。  殺さないように注意して、犯した。  良かった。  気持ち良かった。  今までで一番良かった。  殺すまで絞めたらどうだろう、そう思ってしまったけれど我慢した。  まだだ。  今はまだ。  愛がなくても、殺意があればセックスは十分楽しいことを少年は知ったのだ。  ソイツが気絶し、床に下半身をむき出して転がっているのをそのままにして、少年は教室を出た。  イかせてやったんだから、文句はないはずだ。  いずれ、本当に殺す。  彼は誰にも触れさせない。  触った以上は殺す。  考える。  ずっと考えてきたこと、真剣に検討する。  小さい頃から考えていたことが、現実的な意味を持ち始めている。  とにかく彼に。  彼に会わなければ。  そんな目に合わされていたのに、自分も同じような真似をしてしまったのが悔やまれた。   一刻も早く謝りたかった。  慌てて部屋に戻る。  仲直りをしよう。  何度でも謝ろう。  絶対に彼がされたくないことはしないと誓おう。  だから、もう一度抱きしめさせて。  優しいキスさせて。  思わず駆け足になっていた。  部屋のドアを思い切り開けた時、少年が見たのは泣いている彼だった。  部屋の隅で床に身体を丸めて泣いていた。  「どうしたの?」  駆け寄ろうとすると、彼はさけんだ。  「来るな!」  立ち止まる。  少年は彼を見た。   何か不自然な姿勢だ。  まるで股間を隠すように座っている。  ズボンだ不自然にずらされていて・・・。  「見るな!出ていって!」   彼は泣いた。    「・・・もしかして、自分でしてるの?」  少年はできるだけ優しく聞く。  彼は真っ赤になる。   なのでそれが正解なのたとわかった。  そしてすすり泣く。  「なんとかしたいのに・・・なんとかしたいのに・・・」  困ったようにつぶやいた。  羞恥と困惑がその顔にあった。      

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