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愛撫 10
「来て・・・」
彼が少年を呼ぶ。
少年は彼の元に戻る、泣きながら。
彼が両手を広げた。
抱きしめてくれるんだと思った。
でも、躊躇した。
彼に何もしないでいられるだろうか。
「来て・・・」
でも、微笑まれたら逆らえない。
彼を抱きしめる。
彼に抱きしめられる。
久しぶりの抱擁に、また涙が止まらない。
「手でしてあげるし、飲んであげる。・・・でもそれ以上はダメ」
優しく言われた。
「好き。好きだからしたい」
言い張る。
「・・・君は好きじゃなくても出来るでしょう。というより僕達は。・・・僕もいずれは誰かとしなきゃいけないそれが仕事だから」
彼は言った。
悲しそうに。
「・・・だからあげる。僕の心だけあげる。この身体なんかただの商品だ。いずれ誰かに好きにされるとしても・・・君とだけはしない。君が好き。君だけが好き。だから・・・君とだけはしない。他の誰としても」
彼は言った。
その言葉に衝撃を受けた。
「僕の心はいらない?・・・身体がいい?身体は僕のモノじゃない。でも、心だけは僕のモノだ。それだけでは足りない?」
彼は言って少年を抱きしめる。
足りない。
少年は思う。
彼の心も。
彼の身体も、両方欲しかった。
でも、彼の気持ちもわかった。
「・・・それが理由?僕としたくないのは」
囁く。
この腕の中の身体を貫き、突きまくりたかった。
鳴かせたらどんなに甘い声が出るかは知ってた。
「うん。・・・君だけが好き、だからしない。僕達もうすぐここを出る。そうなったら一緒にいられるかもわからない。だから、忘れないで、君とはしなかったからそこそ僕を覚えていて・・・。誰とでもする僕達だからこそ」
彼は言った。
このままだと、いつか彼は抱かれる。
少年ではない誰かに。
それが少年達の存在理由だから。
誰かが、この身体に触れる。
誰かが、この中に入る。
そして、甘い声を聞く。
許せなかった。
そんなことはさせない。
「じゃあ、もし、僕以外に抱かれることがなかったなら・・・僕に抱かれてくれるの?」
大事な質問だ。
「・・・うん」
当たり前のように彼が言った。
「わかった・・・他の子とはしない」
少年は言った。
彼の顔が明るくなり、そして困った顔になる。
「でも、それじゃ君がツライ・・・いいよ、他の子として・・・」
彼は少年を思いやる。
少年は思う。
自分が彼なら、他のヤツとしてもいいなんて絶対に言わない。
触った奴らも殺す。
「・・・他の子とはしない。だから、手でしてくれる?」
甘えたように言う。
彼はうれしそうに笑った。
僕がよそにいかないと思うだけで、こんなに喜ぶくせに。
他へ行けなんて言う・・・。
少年の胸が痛い。
彼の手で取り出されしごかれる。
気持ちいい。
彼の指だから。
「髪撫でたり、キスはいい?」
囁くと、彼は赤い顔で頷いた。
彼の指は優しくて、他の子達のようにいやらしさや、淫らさはなかった。
でも、一生懸命気持ちよくしようとする思いが伝わってきて切なくなった。
「アイツ等に触られたの?」
喘ぎながら不意打ちで聞く。
彼の手が止まった。
「・・・聞いたの?」
彼は真っ青になる。
「・・・なんで言わないの?仕返ししてやったのに」
少年は言う。
「・・・君が仕返しするから・・・言えないんじゃないか。また懲罰房に入りたいの?」
彼が答えた。
だから、か。
納得した。
少年が暴れて、懲罰房に閉じ込められ、食事を抜かれるのを恐れたのだ。
「・・・少し触られただけだから」
彼の声が震えたから、怖い思いをしたのだと思った。
「・・・手動かして」
せがむ。
彼は再び手を動かす。
「仕返しなんかしないで」
彼は言った。
「・・・君がそう言うならしない」
頬や髪に優しくキスをした。
仕返しなどするものか。
殺すだけだ。
「気持ちいい?」
彼が一生懸命扱きながら言った。
「気持ちいいよ」
髪を撫でて抱きしめる。
この身体を抱く。
絶対に抱く。
そう思うだけで出そうになった。
「飲んでくれる?」
お願いすると、彼は咥えてくれた。
喉にいれたりはしない。
それはもっと、彼が少年に抱かれることに慣れてからだ。
少年が放ったものを彼は飲み込んでくれた。
抱きしめる。
「好き。大好き」
何度も言う。
「好き、僕も」
彼が照れたように言った。
少年は決めた。
幼い頃から思っていたことではあった。
逃げる。
彼を連れてここから逃げる。
そして、自分だけの彼にして・・・彼を抱こう。
僕だけの彼を。
それまでは。
少年は彼を優しく抱きしめた。
これでいい。
少年はもう一つ決意する。
彼に触れた奴らはついでに全員殺す。
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