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脱出 2

少年は焦っていた。  選抜だと。  「人形」としての適正があるかないかを審査するのだと言う。  その審査後、組織の「人形」になるか「売られる」かに別れるらしい。  「売られる」・・・「人形」より最悪だ。  まだ組織の人形なら、身体に傷が残るような真似はされないし、あまりにも酷い客は事前にふるい落とされる。  最高級の人形だから。  でも、売られるのは、どこに売られるのか知らないが、それは最悪だ。  どうなるのかはわからない。  審査は誰で何が行われるのかは聞きだせなかったけれど、大体はわかる。  適性を見ると言った。  まあ、そういうことを誰かにされるんだろう。  自分が誰かにされるのはゾっとした。  仲間やマザーならまだいい。  彼に似ているから。  でも、他は嫌だ。  それにするならともかく、されるのはゴメンだった。 さて、と。少年は考えている。 そして現在の彼との関係は。  「しないでいいの?」  彼は驚く。  腕の中から驚いたように、身体を起こす。 仲直りはした。 そしてあれから毎日飲ませていた。 だからしなくていいと言われて驚くのは当然かと少年は思う。  してもらいたい気持ちはあるのだけど、さすがに散々マザーに出した後だと・・・毎日飲んでくれている彼にはバレてしまう。  ヨソでしてきたことが。  精液の濃さで。 バレてはいけないと思っている。  「その代わりにして欲しいことがある」  少年はとりあえず何かごまかすことを考える。  彼にはバレたくない。  何かないか、させろさせろといってきた人間が、代わりにさせてごまかしのきくこと・・・。  やりたいことや、させたいことなどいくらでもある。  でも、彼が受け入れられること。  ・・・ああ、そうだ。  「僕の名前をつけて」  少年は軽いキスを彼の唇に落としながら言った。  「・・・名前?でも、それは・・・」  彼はおびえたように言う。  名前は禁じられていた。  ニックネームでさえ。  必要がある時は与えられた番号で呼び合うことになっていた。  人間ではない、人形なのだと、思い知らせるために。  少年達はそれが何故か嫌で。  「おい」「お前」「ちょっと」  そう呼び合い、出来る限り、番号を呼ばないようにして生活していた。  だから、これは禁忌。  「・・・二人だけの秘密」  甘く囁き、髪を撫でその髪にキスする。  「名前・・・」  彼は呟いた。  「  」  その耳に少年は甘く囁く。  「  」  一つの名前。  前から思ってた。  彼を名前で呼ぶならこれがいいって。  彼が震えた。  脱がせておけば良かったと後悔する。  パジャマの襟から首筋から真っ赤になってるのが見える。   「それ、僕の名前?」  彼が腕の中で震えている。  前に触って泣かせた時みたいに。  軽く抱きしめているだけで触ってないのに。  「うん・・・嫌い?」  少年はキス出来るほど近く顔を近づけて囁く。  彼は真っ赤な顔のまま、首をふる。    「  」  また呼んだ。  彼が震えた。  はぁっ、  彼が吐息をこぼす。   「  」  また呼ぶ。  彼の身体が震える。  抱きしめ名前を呼ぶ。  名前を、抱きしめながら呼ぶことは、性行為になるのだとその日、知った。  でも、彼はこれは拒まなかった。  だから、ただ、髪を撫でてキスする距離でキスはせずに囁き続けた。  「  」   震える身体。    「  」     また呼ぶ。  「・・・僕おかしい」  涙目で朦朧と彼が言った。  マザー相手に出なくなるまでしていたのに・・・少年もまた、勃っていた。  でも、耐える。  「  」  名前を囁く。    ビクンビクン  彼の身体が激しく震えた。  「あっ・・・」  彼が怯えた顔をした。  「出た」  小さい声で彼が言った。  「本当?」  彼は彼を抱きしめた。  パジャマの上から彼のそこをそっと触れる。  パジャマの上からも、そこの様子がわかった。  すぐに離した。   彼が嫌がるから。  「  」  名前を呼んで抱きしめた。  名前を呼んで抱きしめることは・・・彼は嫌がらなかった。    「  」  震える声が少年を呼んだ。  濡れた瞳で見つめられ、その名前は呼ばれた。  自分の中にそれはゆっくりと、入っていった。  「それ、僕の?」  少年は囁く。  彼は頷く。  真っ赤になりながら。  「もう一度呼んで」  少年は囁く。  「  」   優しい声が囁いた。  耳元で囁かれ・・・めちゃくちゃキた。  強く抱きしめる。  でもそれ以上はしない。  勃起した少年のモノに彼は怯えたが、少年が動かないので安心する。  「  」  また名前を呼ばれた。  ああ、このままこすりつけてイキたい。  でも耐える。  「  」  少年も彼の名前を呼んだ。  パジャマの上から自分の股間から、彼のも反応しているのがわかった。  「  」   彼が少年を呼ぶ。  これは禁じられた行為。  絶対に許されない行為。  生まれてから死ぬまで、名前を与えられない少年達の秘密の行為。  名前を呼び合うだけの性交に、少年も彼も甘く解け、果てた。  「・・・僕に名前をありがとう」  彼が微笑んだ。  「・・・僕に名前をありがとう」  少年も微笑んだ。  少年の決意は固まる。  ここを出て、彼と名前を呼び合いながら・・・生きるんだ。   少年は彼を抱きしめた。  「君だけいればいい」  少年は囁く。  「君だけでいい」     いつか溶け合うんだ。  繋がって溶け合って、境目なんかなくなってしまうくらいに。  名前を呼び合い、どちらの名前なのか解らなくなってしまうくらいに。   「うん」  彼もしがみついてきた。    ・・・まだ彼には言わない。  すぐ顔に出てしまうから。  さて、どうやってここから出るか・・・考えよう。

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