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脱出計画 2

 その日の、マザーとの補習と言う名のセックスは、早くも終わってしまった。   電話がかかってきたからだ。  マザーはため息をつく。  騎乗位で責めるマザーに、久方ぶりに少年が圧倒されていたところで、面白くなってきたところだったからだ。  だが、めったに鳴らない電話には出なければならない。  「・・・帰りなさい」  マザーは自分から離れた。  引き抜くとき、微かに喘いだ。   「・・・いいの?」   少年はマザーの乳首に唇を当てる。  「・・・やめて」  マザーはピクリと身体を震わしたが、そう言った。  少年は大人しく、マザーから離れた。  マザーは精液に汚れた姿のまま電話に向かい、少年に出て行くよう促す。  「・・・コレで終わり?」  少年も勃ちあがってるし・・・でも仕方ないらしい。   ため息をつく。  少年はマザーの部屋のバスルームを使って抜いて、シャワーを浴びて、補習からかえってきた。  勉強部屋に入ろうとして、その声に気付く。  すぐにわかった。  それは彼の泣き声だったから。  ドアをものすごい勢いで開けた。  彼が3人に襲われていた。  両手両足を二人に抑えこまれ、もう一人に胸を吸われいた。  ズボンも脱がされて、胸を吸ってるヤツに同時に、そこを無理やり扱かれていた。  「止めて・・・お願い・・・止めて」  彼は泣きじゃくっていた。  さすが少年に首をこの間絞められたヤツはいなかったが、まだどいつこいつも分かってないらしい。  彼に触れたなら、少年がどれほど激怒するのかを。  ドアが叩きつけられるように開く音に、彼らは振り返る。  そして、少年を見て彼らは焦った。  少年は一人だけ身体が早く、彼らとは体格が全然違っていたし、幼い頃から少年の苛烈な性格を彼らは良く知っていたから。  「・・・こんなの遊びだ」   慌てて彼から離れながら、彼に触れていたヤツは言った。  怯えていた。  少年の憤怒は凄まじいものであるのがわかったから。    「ほら、勃ってるだろ。気持ち良かったんだよ、この子も。君だだって僕を無理やり押し倒しシたじゃないか」  ソイツは綺麗な唇を尖らせた。  いつだったか、ソイツを抱いた記憶はあった。  押し倒したかもしれない。  だが、すぐ喜んで自分から尻をふっていたはずだ。  確かに彼は勃起していた。  ソイツに勃起させられていた。  コレは違う。  喜んでいるのとは違う。  手足を抑えていたヤツらが離れたので、彼はその勃ったものを必死で少年の目から隠そうと、うずくまる。  少年は知ってる。  彼は感じてしまったのだ。  嫌なのに。  マザーもそうだし、自分そうだし、彼らもそう。  この身体は快楽に弱い。  気持ちよければ後はどうだっていい。    「お前達と彼を一緒にするな!!」  少年は怒鳴った。  誰にでも、触れられば感じる身体で、だれにでも愛されれば乱れる身体で、それでも彼だけは快楽を拒否しているのだ。  誰も彼も、少年も含めて快楽ばかりを貪っているのに。  「人形じゃない」と。  人形ではない自分でいたいから。  快楽に負けないで。  少年は頭にきていた。  「僕がお前らの相手をしなくなったから、彼に嫌がらせか?」  少年の唇が皮肉な笑みを作る。  彼らが赤くなったから間違いないだろう。  人形になることになんの疑問も持たない愚かなヤツらが。  少年は嫌悪する。  彼は違う。  僕も違う。  僕と彼は、お前らとは違う。   お前らごときが彼に触ってるんじゃない。   少年は彼に触れていたヤツに近づく。  ああ、丁度いい。  ためしてみたいことがあった。  少年は脱出計画のために知りたかったことを実験してみることにした。  そのために、コイツで試す。  少年はソイツの顔を殴りつけた。  殴り方は最近知った。  マザーとやる順番でモメたヤツらが、殴りあいをしていたのを見たのだ。  男達の殴り方は見たことのない殴り方だった。  それは今まで喧嘩で本能的に殴っていたやり方以上に、効果があるように思えた。  この工場のセキュリティーでもある彼らが、ボクシングを使っていたことを少年は知らなかったが、少年は一度見たらやり方の真似ができる。  ソイツの鼻の真ん中に拳がめり込んだ。  何かが潰れた感触がして、ソイツの鼻が有り得ない方向に曲がっていた。  この撃ち方はいい。  少年は上機嫌になりさらに殴った。  右手を撃った身体の回転でためをつくり、それで左を撃つ。  なるほどこれなら利き手で何度も殴るより速く撃てる。  少年は感心した。  ソイツの唇かキレた。  真似事とはいえ、きちんと体重の乗ったパンチを少年はソイツに撃ち込んでいた。  自分よりも体重の重い少年に殴らているのだ、ソイツは。   「止めて・・・」  そう、言っても止めるわけがない。  「止めて」と頼む彼の願いを聞かなかったソイツを少年が許すわけがない。  何発も何発も撃ち込まれる。  鼻が折れ、血が吹き出しても少年はやめない。    ソイツの口の中がズタズタに切れたのだろう、口から血がふきだしてもやめない。  崩れ落ち、倒れてもやめない。  馬乗りになり殴り続けていく。  「止めて!」  叫んで止めたのは彼だった。  でも止めない。   しがみついて引き離そうとしても、引き離せない。  執拗に殴り続ける。  右、左、順番にパンチを繰り出していく。  かくんかくん   ソイツの顔は壊れた人形みたいに殴られる度に揺れる。  他のヤツらはただ、目の前で広げられる光景に怯えていた。  各部屋に置かれた、音声モニターから騒ぎを聞きつけてマザーかやってきた時には、もうソイツは呻き声ひとつあげなかった。  マザーは悲鳴を上げた。  なんとかして、少年をソイツから引き離そうとした。  でも止まらない。    マザーは左手にいつも巻かれていたシルバーのブレスレットの真ん中に埋め込まれた石を押した。  それはセキュリティーをよぶ警報なのだと知った。  セキュリティーが来るまで8分。  その間も無表情に少年はソイツを殴り続けた。  セキュリティー、そう、いつもマザーを犯している男達3人に少年力ずくでソイツから引き離され、懲罰室に拘束された。  セキュリティー引きずられるながら少年はセキュリティーがソイツを外の病院へと手配する声を聞いていた。  少年はこっそり微笑む。   取り押さえるさい、殴られたがたいしたことはない。  必要な情報は手に入れた。

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