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脱出計画 6

 心だけは手にしていると、少年の愛を疑ったことはないと思っていたのに。  少年が嘘をついて他の人を抱いていたことを知り、苦しんでいる。  本当は。  本当は。  少年の心など自分は手にしてなかったのではないか?    マザーは少年の宣告通り胸だけでイかされたようだった。      「・・・んっ、ああっ!!」  さらに少年がマザーに入ったのがわかった。  腰を打ちつける音がし、マザーが乱れ始めた。  「愛してる・・・君だけなんだ!信じて!」  他の人の中に入り、そこで腰を打ちつけながら少年が彼に愛を叫ぶ。  「愛してる。愛してる。君だけ!君だけなんだ」  少年の声は悲鳴のようで。  でも、淫らに腰は動くのだろう。  「・・・バカみ・・たい。こんな・・馬鹿げた愛の告白、笑・・える、アアッ、いいっ!!」  マザーが嘲笑いながら、その行為に溺れる。  「愛してる・・・君だけだ・・・信じて・・・」  少年は味わうように腰を使い、マザーを貪りますながら叫ぶ。  泣いているようなその声が自分に向けられているのはわかる。  「この場・・面でそれ!?・・・・最高の恋愛ドラマ・・じゃないか・・・!!」  マザーは残酷に笑いながら、乱れる。  彼は震えながら、ただ、震えながら、涙を流しながら終わりがない時が過ぎるのを待ち続けた。  マザーも少年も、終わりがない程に互いを貪りあっていた。  二人が快楽に夢中になっているのはわかった。  そこに愛などなくても快楽だけは存在していた。  隙間隙間に、少年が彼に向かって叫ぶ愛の言葉が虚しく彼に響いた。    心なんて・・・ないのかもしれない。  身体の快楽の方が・・・優先されるもので。  心なんてものは・・・意味がないのかもしれない。  彼は涙を流していた。  マザーは少年と彼を解放した。  懲罰室から出し、部屋に戻るといいと言った。  「・・・良かったよ」   マザーは言った。  少年に淫らなキスをして、その身体に少年の跡をたくさんのこしたままで。  そして、シャワーを浴びに裸のまま自室へ向かっていった。  少年も汚れた身体のまま服を着た。  その身体にはマザーの跡が残っている。  吸い跡。  精液。  爪跡。  少年は床で泣き続けている彼を起こした。  少年が触れた時、彼の身体は大きく震えたが、拒否されなかったことに少年はホッとした。  「ごめん。・・・ごめん」  泣いたのは少年だった。  彼を抱きしめた。  「・・・嫌いにならないで」  その言葉の必死さに彼は顔をあげた。  少年は子供のように顔を歪めて泣いていた。  「・・・嫌いにならないで・・・」  少年は泣きじゃくる。  その身体が震えていた。  「嘘ついて・・・ごめん・・・他の人を抱いてごめん・・・嫌いにならないで、嫌いにならないで・・・」  少年はか細い声で呟く。  「・・・嫌いになんてならない」  彼の声がした。   少年はこれほどホッとしたことはなかった。  脱走計画を話しておくべきだったと思った。  マザーを抱くことが必要だったことを理解して欲しかった。  確かに。  確かに。  楽しんだけれど。  先程でさえも。  自分の淫蕩さに・・・流石に吐き気がした。  ダメなんだ。  セックスしだすと・・・それを楽しまずにはいられない。  こんなに心は彼を求めているのに。  でも、許してくれた。  許してくれた。  少年は彼を抱きしめる。  嬉しくて。  「嫌いになんてなれるはずも・・・ないんだ」  彼が呟いた。   その声の乾いた調子に少年は焦る。  彼はもう泣いてさえいなかった。  「・・・僕達はセックスドールなんだね」  彼は小さく笑った。  「そういう風に作られた・・・セックスが大好きで、セックスするための人形・・・」  彼は唇を噛んだ。   「僕達に欲望以上に価値のあるものなんて・・・ないのかもね」  そして、立ち上がった。  「帰ろう・・・僕達の部屋に」  泣いてる少年に優しく微笑みかけ、その手を差し伸べた。  違う。  違う。  そう言いたかった。  彼がくれた心が大切だった。  それがあるから希望がある。  欲望以上に大切だった。  でも・・・それを言う資格は自分にはなくて・・・。  「・・・泣かないで」  そう優しく手をひいてくれる彼の横で、子供のように、泣きじゃくりながら歩くしかなかった。      

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