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脱出計画 7
彼は変わらず優しかった。
もう二度と触れさせてもくれないかもとさえ思っていたのに、いつも通り優しく触るのは許してくれたし、次の日の夜はいつものように手でしてくれたし、飲んでくれた。
「ごめん。ごめん」
泣きながら謝った夜。
震えながら抱きしめた夜。
あの日も彼は優しく抱きしめかえさえしてくれた。
「君だけなんだ・・・幼い日から君だけなんだ・・・」
泣きながら訴え続けた。
優しい彼。
残酷で冷酷な自分達の中で、たた一人だけ違う彼。
人形になることを拒否し続けてきた彼。
「君がいなければ・・・僕も人形だったかもしれない」
わかって。
そう思う。
本当に欲しいのは、彼だけなのだ。
彼は何も答えない。
ただ、優しく髪を撫でてくれるだけ。
その指は優しいのに。
遠い。
彼が遠い
「 」
彼の名前を、こっそり二人でつけた名前を呼んだ時だけ彼の身体が震えた。
「好きなんだ。好き・・・」
泣く少年に彼は微笑んだ。
「僕も・・・好きだよ」
そう言ってもくれた。
でも、何故そんなに遠いのか。
でも、何故そんなに寂しそうなのか。
無理やりでも彼の中に入れば、この距離は埋められるのか。
触れれば、マザー達などしてる時とは全く違った風になるのをわかってもらえるのか。
いつか、君を抱く日には僕は狂ってしまうかもしれない。
そうとさえ思っているのに。
伝わらない。
そして、やはり脱走計画については言えないまま・・・すごす。
やはりたまに、マザーに呼び出され、その時はマザーを抱く。
今まで通り。
マザーを狂わせ、マザーに狂う。
流石にマザーはもう、彼を連れてきたりはしなかった。
それは単に、選別前に彼を壊さないためだったのだろうけど。
マザーを抱いた身体をいくら洗っても、汚れた気がするようにはなった。
そんな夜は流石に彼に触れなかった。
彼が声を殺して泣いてるのに、胸を痛めながらどうしてやることもできなかった。
彼以外を抱く・・・。
彼が悲しむ。
ああ、アイツら、死んだらいいのに。
身勝手に少年は思った。
自分が抱いたアイツらが消えれば、彼は泣かない。
抱きながら首を絞めたことを考えた。
本当に殺してしまえば・・・。
ゾクリとした。
ちょっと思った。
確かに「セックスが始まれば楽しんでしまう」
でも、別に・・・セックスじゃなくてもいい。
セックスしなくても楽しめるのなら、セックスしなくてもいいんじゃないか。
少年は思った。
計画はこの時完成した。
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