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殺戮4
悲鳴が起こった。
そして、立て続けに悲鳴は増えていった。
最初に反応したのはマザーだった。
隣りの子供達が待っている部屋からだ。
マザーは隣りの部屋に帰そうと抱えていた、先程ドール達に弄ばれていた子供を床に起き、隣りの部屋に走った。
ドアを開けた。
そこは、血の海だった。
選考を待つ子供達は、全員が血にまみれていた。
肩や腹を刺され、皆呻いていた。
瞬く間に10人以上が刺されていたのだ。
喉を切り裂かれ、もうすでに息絶えた者もいた。
マザーはブレスレットのボタンを押した。
これでセキュリティーが来る。
それと同時に幹部達に付き従っている、ボディーガード達に声をかける。
「大変!子供達が殺されている」
でも、ボディーガード達は動かなかった。
彼等の任務はあくまでも、幹部とドール達の護衛であるからだ。
「お願い!」
マザーは叫んだ。
幹部の一人がボディーガードの一人に命じた。
「見て来い」
ボディーガードは4人いる。
一人位、向こうの部屋の様子を見てきても良いと思ったのだ。
始まりかけていた、ドール達との次の子のセックスもさすがに中断されていた。
ドール達は、その子をだきめしめ、不安げに裸のまま寄り添っていた。
その子だけはまだ、触れられた感覚から離れられず荒い息をしていたけれど。
一人のボディーガードが銃を構えたまま、隣りの部屋に入っていった。
少年達は呻き声を上げている。
皆喉を、切られていた。
あの僅かな間に・・・これだけの人数の首を斬るなんて・・・。
何者だ?
組織の財産であるドール達を壊すなど、敵対組織か?
どうやってここに入った?
ボディーガードはあたりを見回す。
ここには同じ顔をした、怪我を負った少年達しかいない。
「・・・」
呻き声がした。
一人の少年が喉を押さえたまま、ボディーガードに後ろを指差していた。
ボディーガードは慌てて振り返る。
しかし、そこには必死で立ち上がろうとする、喉を押さえた血まみれの少年しかいなかった。
ここにはおかしなヤツはいない。
いたとしても、ソイツは出て行った。
今必要なのはボディーガードではない、医者だ。
ボディーガードは部屋に背を向け、ドアから出ようとした。
ふと、ボディーガードは思った。
あやしいヤツがどうやって入りこんだのか、ではないのなら?
あやしくないヤツが最初からいたのなら?
そして、必死で背後を指差す少年。
本当に彼がその「誰か」を指差していたのなら?。
いたのは血まみれの怪我をした少年。
本当に怪我をしているのかたしかめたのか?
慌てて銃を構え振り返ろうとした時には遅かった。
喉を切られていた。
いつの間にか、傍らに立っていた少年に。
気配などなかった。
血で汚れた服を着ていたけれど、その喉には傷はなかった。
「・・・気づくの遅かったね」
少年は微笑んだ。
声もなく男は倒れた。
首から鮮血を吹き出しながら。
今度は上手くいった。
これだけ斬ればうまくなる。
この男はすぐに死ぬだろう。
ナイフはいい。
少年は思った。
銃よりも気付かれにくく、音もなく死ぬ。
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