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終焉 1

 少年が病院にたどり着いたのは次の日の夜更けだった。  病院の名前はマザーから聞き出していたし、マザーのノートには、街へどう行くかなどが詳しく書いてあった。  病院にたどり着くまで、どれだけのことがあったのかは思い出したくない。  さすがに疲れ果ててはいた。  先程殺して奪った看護士の制服を着ていた。  女性のものだか、その方が問題なかった。  ほっそりとした少年の身体は、女性でもまだおかしくはなかったからだ。  「四人もよ」   看護士達が話をしている前を顔を俯けて通る。  早く彼を見つけなければ。  「そう、みんなおなじ顔なの。綺麗な子達」  看護士の言葉に少年は脚を止めた。  ほら、見つけた。  思わず笑顔になる。  手にしたカモフラージュ用の書類をめくるふりをして聞き耳を立てる。  「でも・・・移植だなんて。全員がよ?確かにこの病院はちょっと訳ありなのは知ってるけど」  看護士の言葉に耳を疑う。  移植?  なんのことだ?  「今、手術室からでてきて地下にね、終わった後も綺麗にしてあげてたわ、先生も。だって綺麗な子達なんだもの」  看護士が悲しそうに言った。  地下?  地下だと? 少年は階段を駆け下りた。  そして、地下に下りて・・・絶句した。  そこは死体安置所だったのだ。  何故?  何故?  彼の傷はそんな死ぬようなものではなかった  呆然としたまま、そこのドアを開けた。  4つの死体が並べられていた。  4人の美しい少年達。    そして、一番端の死体が誰であるかは、少年には分かった。    まさか。  そう思った。  かけられていたシーツを剥ぎ取った。  縫い合わされはいたが、腹や胸に切られた後があった。  少年はすぐに理解した。    選別で不合格になったら「売却」されるということは知っていた。  てっきり「セックスを提供する」意味で売られるとばかり思っていた。  組織以外の売春組織に。  違った。  中途半端なセックスドールの存在は、ホンモノのセックスドールの価値を下げるものでしかない。  だから。  だから。  組織は完璧でないセックスドールを「内臓」として売ったのだ。  おそらく、彼や、死にかけの子供達は、ここに来て、コーディネーター達の手によって売り先を見つけられ、必要な場所へ内臓として売られたのだ。  手術したばかりだと看護士達が言っていた。    少年は凍りついた。  僕がここに送った。  僕が彼をここに送りつけた。    ここに送るまで彼は生きていたのに。  震える指で少年は彼に触った。  焦がれ続けたその身体に触れた。  少年は彼を抱きしめた。  それは亡骸で、内臓も奪われ、おそらくその閉じた目の角膜も奪われているはずだった。    僕の。    僕の。  僕のたった一人愛した。     少年は悲鳴をあげた。  ベッドから彼を引きずり下ろした。  その身体をだきしめる  青ざめた身体をだきしめる。  まだ暖かさはあった。  でもあの抱きしめた体温はなかった。  死んだばかりの肉がそこにはあるだけだった。    「  」  名前をよんだ。  秘密の名前を呼んだ。    その唇に唇で触れた。  何も返ってこない。  愛しい吐息さえ。  少年は彼の乳首に口づけた。  いつもそこに口づければ怯えたように震えた身体は何の反応もしめさなかった。    それでも夢中でそこを愛撫した。  それでも愛しかった。  彼か泣かないからやめなかった。  「止めて」と言わないから止めなかった。   思う存分愛した。  舐めて、噛んで、味わいつくした。  そこでずっとそうしていたかった。  何の反応もない前をしごき、そして、その場所に押し入った。  ずっと入りたかった場所に。        そこはもう、あたたかくもなかった。  それでも。  それでも。  愛しかった。  だから、気持ち良かった。  中で放ち、そして、また動いた。   「止めて」、そう言われない限り、貪ることを止めるつもりはなかった。    狂ったように腰を打ちつけていた。  気持ち良くてたまらなかった。  彼はされるがままに、受け入れていた。  人形のように。  やっと人形ではなくなるはずだったのに。  少年は叫びながら、彼を犯し続けた。  「  !!!」  彼の名前。  彼の名前。  誰よりも愛しい人の名前。  何度も何度も犯し続けた。  快感に脳が焼かれ、吠えるような声か出ていた。   自分のそこが溶けるかと思った。  少年と死体を引き離すのに、7人がかりが必要で、その内一人は少年によって重症を負わせられた。  少年は結局、組織にまた捕まってしまったのだった。

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