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終焉 3

 少年は彼を埋めた場所に来ていた。  そこには墓碑などなかったが綺麗な場所だった。  ボスが埋めてもいいと言った場所は良い場所だった。  いつかあの男を殺す時、楽に殺してやってもよいと少年は思った。  海の見える丘。  少年達は海など見たことなかった。  「君のことは忘れる」  少年はその場所にしゃがみこんで話しかけた。  彼の言葉は覚えていた。  「僕を助けられなかったら、僕を忘れて」  それが彼の望みだった。   もう、彼にしてあげれることはないのなら、もう、それしか残ってないのなら・・・。  そうするしかなかった。  それがどんなに残酷な望みでも。  ここへ来るのは今日が最後だ。  全て忘れる。  自分がセックスドールだったことも。  育った場所も、仲間も、マザーも、全て殺したことも。  少年はそう決めていた。  少年がいまいる組織の部署はセックスドールとは無関係で、そこの連中はセックスドールについては噂以上のことしか知らない。  少年がセックスドールだったことを知っているものは上層部の一部だけだ。  ボスは名前を与えようとしたが断った。  名前ならすでにある。  彼がくれた名前だ。  でもそれは、彼と一緒にこの地面の下に埋めた。  彼を忘れたならば、その名前も忘れてしまうだろう。  少年には名前がない。  永遠に。  その名前は忘れ去られる。  少年は今、かなりの自由を与えられている。  訓練は受けている。  自分には才能があったことを知る。  もうすぐ仕事を始めるだろう。  楽しみだ。  街へ繰り出し、セックスも楽しんでいる。  少年の容姿は相手には困らない。  ただ、正直、セックスより殺す方が楽しいかと思ってしまうし、  少し乱暴にして、ぐちゃぐちゃ泣かれたりすると、殺してからしたほうが楽しいと思ってしまう。  まあ、そのうちうまく処理出来るようになったらそうしてしまうだろう。    この世界は僕が快楽を貪るためにある。  少年はそう信じている。    人間が少年達を快楽を貪るために作ったのならば、少年が人間を貪ることも構わないはずだからだ。  「愛してる」  もう誰にも言わない。  この言葉は君だけのために。  忘れ去って、覚えていなくても。  少年は彼に囁いた。  「  」   もう呼ぶことのない、彼の名前を呼んだ。  その名前には甘い痛みがあった。  「  」  彼が名前を呼んでくれた気がした。  もう二度と呼ばれることのない、少年の名前。  ここに埋めて、忘れ去る、少年の名前。      もうこの心に触れる人など・・・いないのだろう。  少年は泣いた。  ただ、ひたすら泣き続けた。    

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