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マザー3

 「あんたの名前は・・・」  いつものようにその胸に夢中になりながら尋ねた。  まさか膨らんでもいない男の胸に夢中になる日がくるとは思わなかった。  でも、その白い滑らかな胸の、ふたつの小さな突起を弄るのがどうしようもなく好きになっていた。  「・・・あっ、いい」   その人は喘ぐ。  気持ち良さそうに。  「名前は?」  もう一度聞く。  抱く時に、名前が呼びたい。  一緒にいれない夜にも、この人を思って自分でする時にだって名前を呼んで出したい。  名前が知りたい。  少しでもこの人が知りたい。  「名前を教えて・・・」  繰り返し続けた。  この人が人形なんかじゃない気かしてた。  男達は子供達に近づくことはない。  子供達は大金を稼ぐセックスドールだ。  大切に育成されている。  触れる所か、喋ることさえ許されていない。  でも、この人が子供達を見つめる目は見てきた。  優しい。  とても優しい。  そして、子供達には少しだけ笑う。  男達に向けられる笑顔程艶やかではない、飾らないこぼれたような笑顔で。  俺にもそんな風に笑って。  そう思ってしまった。  「マザー」  子供達がその人をそう呼ぶのも知っていた。  「僕が育てたからね、育ての母。男だけど」  その人が不思議そうに見つめる男に苦笑しながら答えたのを覚えている。  「乳離れしてから連れてこられた。そして、僕が育てた。さすがに最初は僕以外にもお手伝いさんかいたけどね」  子供なんか育てたことがないから・・・大変だった。   そう、その人は笑った。  その顔はいつもの完璧な笑顔じゃなくて。  「・・・それももうすぐ終わる」  その人はそう言った。  その眼差しの遠さも。  子供達がここを離れるのはしっていた。  男の任務は子供達がこの工場を出る日までだったから。  それはただ抱く為の会話じゃなくて、たわいもない会話でだからその人自身に触れた気がした。    「名前・・・」   男はその人の中を味わいながら、囁き続ける。  「・・・ない、んた・・・、子、供のころ・・はNo.4、仕事の時はQ-3そう喚ばれてた・・・そして今は『マザー』」  諦めたようにその人は言った。  それは名前じゃない。  そう男は思った。  「ベッドで『マザー』なんて呼べないだろ」   男は苦笑し、マザーも少し笑った。  それは、本当に笑ったみたいで・・・。  男は嬉しかった。  「  」   男は名前を囁いた。  「・・・女の名前?」  その人は少し笑った。  この国の女の名前だ。  多少ありふれた。  「・・・彼女の?」  喘ぎながら、その人は尋ねる。  彼女・・・嫉妬などされないことはわかっているのに、切ない。  「・・・いや、母親の」  言いかけてしまったと思った。  「・・・お母さん?」  その人も目を丸くしていた。  ベッドで母親の下の名前を喚ばせるなんて、かなり高度なレベルの変態じゃないか。  「マザー」と呼ぶよりはるかに変態だ。  色んな変態に慣れてるだろうこの人かどん引きしている。  「・・・違う!!母さんは俺か小さい頃に死んでて・・・ただ、俺にとっていちばん綺麗な名前って、この名前なんだ!!」  この人を名前で呼ぶなら、一番綺麗な名前で呼びたかった。  それだけ。  それだけ。  「・・・一番綺麗な名前なんだ」  男は呟いた。  母親のことは何一つ覚えていない。  名前だけが全てだった。  「綺麗な名前なんだね・・一番」  その人が俺の腕の中で笑った  ほんの少し、ほんのわずかな微笑。   それがひどく甘く感じられた。  その人はそれまて、どんな淫らなキスでもしてくれたけど、その時が初めてだった。  自分からキスをしてくれたのは。  その小さなキスに男は射精してしまった。  「  」  男はその名を抱く時に囁くようになった。

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