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マザー 4
その人を抱く代償と言うわけではないが、他の連中か色々その人にちょっとしたものを贈り始めたのは知っていた。
雑誌や本、こんなとこでは食べられない菓子など。
最初は人形人形とバカにしていたのに、その人に骨抜きになっていく。
その身体に溺れ、僅かな微笑みが欲しくて、何でもしたい気持ちになるのは一緒だった。
だから、1対1でするな、と前任者達は言ったのだ。
ハマるのだ。
本気で。
男は苦しむ。
自分もコイツらと同じだと言うことに。
レイプしておいで、気持ちを寄越せというような奴らであることに。
他の奴らに触れてられるのが嫌なのに、それさえ止められない、上の目を掠めてその人を貪る組織の下っ端であることに。
組織の一員になれたのは嬉しかった。
この国じゃ、組織の一員であることはステイタスだった。
組織は悪いだけじゃない。
確かに悪いこともしているが、組織は地域の人々にきちんとした仕事を与え、きちんとした賃金を払い、おまけに労ってくれた。
それがケシ畑の栽培であっても、だ。
人形達を作るための代理母達にも、大金を払ってくれた。
彼女達が人形を産んだおかげで手にした金で、次に生む子供は街で身体を売らなくてもすむし、口減らしに他所に働きに出されいじめ殺されることもないだろう。
人形達が人間として彼女達から生まれていたとしても、その人生がさほど素晴らしかったわけではないのだ。
組織を必要悪だと男は思っていた。
むしろ、何も知らない綺麗な顔をして、貧しい人々の犠牲の上で贅沢している金持ちなどより遥かにいいと。
だから、組織の一員になれた時は嬉しかった。
これで街角のチンピラから這い上がれたと。
でも。
でも。
この人が欲しい。
この人を俺だけのものにしたい。
そう思わずにはいられなくなっていた。
でも。
見てしまった。
その人が少年としているのを見てしまったのは、偶然だった。
こっそり・・・どうしても会いたくて、皆の目をごまかし「工場」に用事もないのに忍び込んだのだ。
一目見たら、少し話したら帰るつもりだった。
幼い頃、村の少女に恋してた時を思い出して、思わず苦笑した。
あの頃もこうだった。
一目見たいそのためになら、山を越えて見せた。
まあ、今は一目見る以上のことはしてしまっているけれど。
でも、時折目が合った、あの少女との方か、肌を重ねるその人よりも・・・近く感じられたように思えた。
その人は遠かった。
その中で、その奥を犯していても。
とても遠かった。
快楽に溺れながら、やるせなかった。
一緒にいる時よりも、子供達といる時のその人は、はるかに自由で素顔に見えて・・・そんなその人が見たかったのだ。
今日はまた、授業をしているのだろうか。
男は学校など小学校しか行ったことがない。
でも、その人がしている授業なら受けてみたいと思った。
遥かに高度な授業で、さっぱりわからないけれど。
綺麗な唇が他の国の言葉を話しているのだろうか。
また、よそ見している子供達を怒っているのだろうか。
怒るその人は可愛く見えた。
そんな顔が見たかった。
教室を覗くとその人はいなくて。
子供達は喋りながら自習をしていた。
何故だか胸騒ぎがした。
その人の部屋に行った。
部屋の前で、胸騒ぎが当たっていたことを知る。
そこから、その人の声がきこえてきた。
あの時の声が、乱れきった声が漏れてきたからだった。
誰かが、こっそり俺みたいにここに?
そう思うとむかついた。
自分のことは棚にあげてムカついた。
一言言ってやろうと、部屋に入ろうとドアをあけて・・・見てしまった。
その人は、まだ幼い少年と身体を繋いでいた。
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