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第348話 宮ノ内のバレンタイン 11

「義兄さんたちって華江姉ちゃんの旦那さんの(たもつ)義兄さんと清江の彼氏の(まさ)くんのこと?」 「そうだけど?まぁあそこまで筋肉はつけられないと思うけど、筋肉つけないと詩はやれんぞーって言われたし」 「き、筋肉って…!あのおっさんらは何を言って…!ってやれんぞーって!!はっずー!」 いつの間に義兄さん達とそんな話をしたのか…確かに保義兄さんも政くんもガタイがよく筋肉質だ。あれはあれで男らしくてカッコいいけど、霧緒にはあんまり目指して欲しくはないかなぁ……ガチムチな霧緒なんて想像つかないぞ。 風呂場へついてから無造作に籠に衣類を投げ入れる。 湯を張った湯船からは温かい湯気と入浴剤の香りがしていて、その香りに癒される。 風呂に入るのは好きで、気がつくと湯船にじっくり浸かり鼻歌を歌っている自分がいて、俺にとって絶対的に癒しの場だ。 そんな癒しの場が、この一年で彼氏とイチャつく場所にもなっていることを自覚せずにはいられない。 薄いピンク色をした湯船に浸かると、足先指先がじんわりとして気持ちが良い。 「どあぁ…しみますなぁ」 「お前はじいさんか」 向かい合いながら、湯船でたわいもない話を霧緒をするが好きだ。 ここだけの話、湯船に浸かっている時の霧緒は超かっちょよい。 長めの前髪は濡れて手ぐしでオールバックにしているので、霧緒の雄度がアップする。 霧緒は下睫毛が多いから俺の親指であっかんべーをさせたことがあるけど、そんな状態でもいい男はいい男だ。 そんないい男と一緒にお風呂にはいってる俺って一体何なんだろう?って思ったりするけど、そんないい男のことがめっちゃ好きだからに他ならない! でもって俺はそいつにあいされている! 実は結構愛されてる!! 「へへへ…いい湯だなぁ…」 「また何か変なこと考えてただろ?」 「変なことじゃねぇ…風呂でたらあれ渡すから。俺からのバレンタインのチョコ」 「ん」 「ちゃんと食べろよ?そっちを食べてもらってから…こ、こっちの……予定だったんだから」 「予定って?……あ、あぁ…チョコ食べて俺のことも食べてね!みたいな?」 「あーそうそう……って……な、何言って…!」 「さっきの女が似たようなことを俺に言ってた。私のこと食べてもいいわよーみたいな?」 「!!!あんのっ!女狐めーーー!!!」 ザバーーー!!っと女にムカついた勢いで湯船の中で仁王立ちする。 「……どうどう落ち着けって。目の前で立つな…いい眺めだけど」

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