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第352話 宮ノ内のバレンタイン15
キッチンで…風呂場でイチャイチャしてしまい、俺たちの間に漂う甘い雰囲気。
…甘すぎるのも、恥ずかしいからちょっと苦手なんだけど、今日は時別だ。
…
年に一度しかないバレンタインなんだからいっか。
「ん、美味い」
「だろだろー!我ながら上手くできたと思う!」
夕飯を食べた後に、作ったチョコレートチーズケーキを霧緒に渡して食べてもらう。
冷えたチーズケーキは、甘さ控えめなので普段お菓子を食わない霧緒の口にも合うと思った。
自分の作ったものを食べて喜んでもらえるのはやっぱり嬉しい。
それにこれは恋人限定で、霧緒を思って作った特別なものだ。
「詩こっち」
「…」
手招きされて誘導されたのは、座る霧緒の前。
リビングのテーブルにチーズケーキを広げ、ラグの上に胡坐をかく俺たちなんだけど…
霧緒の前に腰を下ろすと、ぎゅっと抱きしめられ、そのままの状態で霧緒がテーブルの上のチーズケーキをフォークで食べていく。
…ドキドキする気持ちと、落ち着く気持ちが混ざって胸が温かくなる。
そしてチョコレートの香りがふんわりと香れば…あぁ…ヤバい…言いたい……甘ーーーい!って言いたい!
「詩も食べたら?ほら」
「う、あ、え!あ、あざーす!」
目の前に、一口大のチーズケーキを差し出され、あーん状態で一口食べさせてもらった。
そう言えば前にもこんな感じで食べさせてもらったことがあったなぁ…
前はパスタだったかなぁ…ん……うむ。
我ながら良くできたケーキだと思う。
いいお味だ…売れるな…さすが、俺!
何でも美味しく作れちゃうんだからな!って、あ!何俺が食べさせてもらってるんだよ!逆だろ逆ー!今日は俺があーんしてやらないとっ!
「はい!その一口待ったぁぁぁ!」
「は?」
「やります!やります!それ俺の仕事!」
霧緒からフォークを奪い取り、最後の一口のチーズケーキを刺して霧緒の目の前に持って行った。
「はいっ!あーんっ」
「…」
「…ん?」
あれ?反応がない。
無表情だけど、駄目だったか?
俺からのあーんは、いただけなかっただろうか?
そう思いつつ霧緒の顔を伺った…どうやら若干の時間のロスがあったようで、瞬きを一度した霧緒は……ちょっと照れた。
……て、照れましたよこの人。
耳が赤くなり、イケメンの顔は少し恥ずかしそうだった。
羞恥しながらでも、イケメンは安定のカッコ良さを発揮する。
そしてエロい。
普通に一口食べるだけなのに、こんなにもエロく見えてしまうのは何故だろう。
チーズケーキは、形の良い口の中に吸い込まれるように消えて行ったのだ。
ぼへーっとして、イケメンの様子を眺めていた。
ら…
うああ!!!??
っん……ぐぅ!?
あっという間に口を塞がれた。
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